洋楽のライナーノートみたいに

 昨日、レコード店から連絡があったんだ。頼んでいたレコードが届いたって。だから早速僕は受け取りにいって、家に帰るのを待ちきれず帰りの車内で封を開けてしまった。ライナーノートだけでも読みたかったんだ。僕がなにより嬉しかったのが、このレコードがコピーコントロールされていないということ。コピーコントロールは本当に僕らを悩ませていた。なんといっても、その言葉を聞くだけで、まるで僕らの生きているということまで束縛されるみたいな気持ちになるんだからね。カタログからこのレコードを頼むときに、コピーコントロールだったら嫌だよ、いらないよっていったんだ。だからレコードが届いたって聞いたとき、僕にはこのレコードがコピーコントロールされていないってすぐに分かったんだ。僕の好きな音楽が自由だって分かって、僕は僕自身も自由だっていう気持ちになったんだ。

 家に帰ると、水曜に注文したペンタングルのレコードが届いていた。けど僕はポール・サイモン・ソングブックを手にしていて、どれから聞いたらいいんだろう。取るに足らないことだけど、こういうときってちょっと悩んでしまうよね。けれど僕らの人生の悩みに比べたら、なんて幸福な悩みだろう。すべての人のすべての悩みがこんなだったらいいのにって、そんな風に僕は思ったんだよ。

1987年ロンドンにて

(初出:2004年9月24日)


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公開日:2005.07.14
最終更新日:2005.07.14
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