映画を見に行こうとして出かけたのです。多分待ち合わせでした。家族のいうには、あそこらへんは迷路みたいだから迷いやすいのだそうですが、いつもざっと地図を見て迷ったことのない私は、今回も大丈夫と高をくくっていたのでした。
そうしたら、甘かったです。本当に迷路でした。周辺住人が、地下街をさらに板で区切って、迷路にしていたのです。昔はやった巨大迷路よりも緻密で、圧迫感のある狭い道を通って、どうにも映画館にはたどり着けそうにない、ほんのそばまで来ているのにと思ったのでした。
このあまりに排他的に見える迷路にはやっぱり批判もあって、だんだん取り払っていきましょうという意見が優勢です。なので板が取り払われて、普通の地下道として歩ける場所も増えてきています。
迷路の途中で出会った昔の知り合いに、映画館にはどうやって行けばいいのか聞きました。天井の案内板にしたがっていけばいいと教えてくれました。確かに天井には案内板があって、映画館は左に行くといいようです。けれどいった先には地下鉄の駅があって、つまり電車で行けということのようです。
歩いてちょっとの距離に電車を使うのは、なんだか悔しく思いました。たった一区料金ですが、こういうところでお金をけちってしまう悪い癖があります。でも今日ばかりは急いでいるので、電車に乗ることにしました。
券売機が込んでいたので、改札近くに立っていた駅員から切符を買おうと思いました。ちょうど小銭があるのでおつりのないように払おうとして、お金を床にばらまいてしまいました。電車が来そうだったから慌てたのです。慌てて拾おうとして思うように拾えず、電車はいってしまいました。
完全に遅刻です。もう帰ろうかと思いましたが、そういうわけにもいかず、なんだかいらいらしたのを覚えています。
(初出:2004年7月23日)