久しぶりに病院に、それも病棟に入った。十年以上前に私はここに入院していて、あれは五階だっけか。今日いったのは三階で、だが雰囲気をどうこういえるほどに私は以前のことを覚えていない。
今日の用は見舞いで、私が入院したとかそういう話ではないので安心して欲しい。部屋の番号は聞いて知っているので、受付をパスしエレベーターホールへと向かうと、そこには大きなストレッチャーがいたものだから、階段を使うことにした。階段を上りながら、私は入院していたころのことを思い出していた。点滴のとれたその日に、一階の売店にいってみようと思い立ち、いってみたのはいいが、たった一階おりただけで力尽きてしまった。よりにもよって階段を使うことはなかったのに。普通ならなんの問題にもならないような運動ができなくなっている。体力が落ちていると実感した。同時に、力尽きたのが踊り場でなくてよかったとも思った。
階段を上りながら、そんなことを思い出していた。
病室で話してみると、元気そうで安心した。いや、別に心配はしていなかったのだが、顔を見ればほっとするものだ。顔色こそは悪かったが、特段不安そうにしているわけでなし、体調の不良を訴えるわけでもなし、まあ順当だろう。一度看護師さんがみえて、見ればナースキャップがなかった。そういえば、十年前はどうだっただろう。思い出せない。そもそも覚えてなどいなかった。
病室の壁、壁紙はなぜか腰の高さまでしか貼られておらず、しかも破れてめくれてしまっていた。別に医療の内容に影響するものでもないから気にはしないが、最近はどの病院も患者を確保するのが大変で、病室やサービスの改善を図っているというように聞いている。ここではそうでもないのだろうか。ただ昼食夕食は二種類から選べるらしい。こういうサービスは私の入院時にはなかったが、それは入院している科が違うからかも知れない。
以上、つれづれなるままに。