私の知る七十八十年代、夏にはむしむしと湿った匂い、じりじりと照りつける太陽があって、夕立がくれば雨がトタン屋根を打つ音もやかましく、薄暗い室内、沈黙した黒電話、夕暮れに聴く蝉の鳴き声。たまにしか使わないクーラーはがたがたと凄まじい音を立てて、足つきのテレビはがちゃがちゃと音を立てて回るチャンネル、南向きの部屋で聴く昼間のラジオは懐メロ、イエローサブマリン音頭。光化学スモッグ警報を告げる市の広報車が走れば子供たちは室内に閉じこめられた時代、みんなそこそこの貧しさを舐めて、けどとりわけ貧しいだなんて思わなかった。
多分、言葉では伝わらないと思います。
けれど、この感覚はもう十年もすれば貴方も得るものであると思います。けど、小学校にパソコンがあった世代よね。私の子供の頃、小学校にはテレビもなかった。中学でようやく一台。そんな時代。ノスタルジーをともに思い出すけれど、貴方の時代もじきにそうなると思えば、時間の経つということが不思議です。