二十三日必着の懸賞を見付けた。買うには及ばないが興味はある商品、こういう場合には当たればラッキーぐらいの気分で端書を出すのが一番だ。当たらなくても五十円の損失。当たるかも知れない、当たったら面白いな、そうした気持ちで充分にもとは取れている。もちろん当たるに越したことはないのだが。
昨夜のことだ。郵便は民営化以降、こと配達に時間がかかるようになったと聞く。だから、二十三日に間に合わせるには、二十日夜に投函し二十一日朝の便で回収してもらうのがよいだろう、そういう作戦でいくことにした。二十一日朝に投函しないのは、きっと起きられないと踏んだからだ。そして、事実起きられなかった。
昼過ぎに郵便局から電話があった。昨夜は酷い雨。そのせいで、宛先が消えてしまったのだという。幸い裏面、こちらの住所氏名等は消えなかった。それで確認の電話が可能となった。
筆記に使ったのは、パーカーの万年筆だった。ブルーブラック。昔のブルーブラックは、消えないインクとして公文書等に使われてきたが、今のブルーブラックはただの染料インクになってしまった。だから水で消える、光で退色する、長期保存にはむかなくなった。それはわかっていたが、昨日の夜は晴れていたからこれで大丈夫と踏んだのだ。それが失敗だった。まさか宛先が丸ごと消えるとは想像もしなかった。
懸賞は、月刊アスキーに載っていたものだ。ただし、アスキーが主催するものではない。東京都新宿区、宛先を読み上げていく、そしてここが大事だ、どきどき魔女神判2、あ、神判は神様の判断で神判です——。なんだろう、このいたたまれなさは。せめて、せめて「どきどき」がなければ……。
雨の日には、水性のインクでは消えてしまうのだ。だからこれからは、せめて宛先くらいは油性ないしは顔料のインクで書こうと思った。たまさか、プラチナのカーボンインクを買ったところだ。以後はこれを愛用したく思う。