大学図書館の有り様を考えるにあたり、社会や大学自体の変化を視野にいれる必要があるだろう。すなわち多様化である。新しいメディアが次々と登場し書籍雑誌、視聴覚資料のみならず、例えばCD−ROMを媒体とするマルチメディアタイトルや出版物、インターネットに代表される新しい情報媒体の導入を考える必要がある。また大学に目を向けるならば、学問領域が拡大しそれぞれの専門領域の枠組みが曖昧になりこれまでの枠組みで学問を捉えることが困難になっている現状がある一方、大学に求められる教育が高度な専門的学問というものから広範に渡る総合的学習にシフトする傾向もあり、多様化といえど一言でいえるようなものではなく、それこそ多様な側面をみなければならない。
これからの大学図書館は、以上で述べたような多極に分化する傾向を同時にサポートしうる機能を備えなければならない。そのためには図書館に新しいメディアを積極的に導入し利用できる態勢を整えることが必要である。ネットワークを介しアクセスできる様々な情報のなかには研究発表や論文をはじめ書誌文献情報、アーカイヴ、データベースなど直接学問に関するものも多い(そもそもインターネットが医療技術系ネットワークから発展したことを忘れてはならない)。ニューメディアやインターネットのみに関していうならば現在において既に導入している大学も多い。しかし情報処理センターという図書館活動とは離れた利用形態を取っていることも多く、両者の活動のつながりが希薄となることもままある。
従来どおり大学で行われている高度な専門教育、研究をサポートする専門性の高く、高度に組織化された蔵書を備えるということはもちろんのこと、専門領域から直接的には外れながらも関連をもちうる多様な蔵書群を所蔵する必要が生じている。しかし総合大学ならばまだしも単科大学においては専門書をそろえながら専門領域外の書籍を購入することにも限界が生じてくる。この際重要となってくるのが現在でも行われている図書館間協力である。問題は現在行われている図書館間協力に留まらず、より先進性をもったものとして学生の直接的に利用できかつ高度化されたものを提供できるか否かであろう。
図書館にインターネット等のニューメディアを導入すべきであるというのは、上記の図書館間協力を高度化させる目的をもっての提言である。現在、インターネット(Web)上に自館の蔵書情報、データベースを公開している図書館も多く、それを考えるヒントとすることができる。学生が直接、自分の大学の図書館が所有していない文献をどこの図書館が所蔵しているかを調べることができ、また図書館を通して請求することができる。その際各図書館が独自の仕様を持つのではなく、標準フォーマットを持ちえればデータの共有はさらに有用性を増すであろう。さらに所蔵している文献、論文等をデジタルデータとし、それを各利用者が直接引き落とせるようにすることに、多大な利便性を見い出すことができる。
例えばカナダの国立図書館は自国のピアニスト、グレン・グールドのアーカイヴをWeb上に展開しており、彼の書いた論文や彼に関する論文、彼の録音資料、年表、書誌文献表等にアクセスすることが可能である。
これからの大学図書館が目指さなければならないのは、図書館毎の資料、蔵書を総合したネットワークとしての総合図書館である。