情報サービス概論

「レファレンス・サービスの種類を示して、わかりやすく説明せよ。又雑誌の書誌、販売書誌、解題書誌について実例を示して説明せよ。又雑誌のレファレンス・ブックも示せ。」


 レファレンス・サービスは質問回答サービス、準備的サービス、副次的サービスに分類することが出来る。

質問回答サービス

 質問回答サービスとは利用者の質問に対し図書館員が直接に応答、回答するサービスのことをいう。図書館の窓口での直接的な面接だけではなく、電話や文書、ファックスを通じての質疑応答もこのサービスに含まれる。このサービスは情報そのものの提示、情報源の提示、情報の所在箇所の指示、図書館の利用法の案内、情報の探索法の案内、二次資料の作成・提供に分類することが出来る。

 情報そのものの提示というのは質問者が特定の情報を求めている際に、その答えが即座に得られるような即答質問である場合になされるものである。この場合には、その回答の典拠が示されることが原則であり、特に複数の異なる回答が得られた場合はこの典拠をもって利用者に判断を委ねることとなる。以前私が住んでいる市の図書館の利用者状況を調べていた時、図書館よりもらった統計の地名で不明なところがあり、それを図書館に電話で問い合わせたものを挙げることも出来るだろう。

 情報源の提示とは質問者の要求する情報に対して、その情報を得ることの出来る資料、情報源を提示、紹介するという回答様式である。質問者が求める文献資料に即した資料を提供することもこの回答様式に含まれる。ロシアの作曲家カバレフスキーに関する情報を欲している利用者に対して『ニューグローヴ 世界音楽大事典』の別巻2 参考文献を提示し、そこからカバレフスキーに関する文献情報を得たことがあった。

 情報の所在箇所の指示は、利用者が求める資料が何に所収されているか、その資料が当館のどこに排架されているか、或いはその資料が所蔵されていなかった場合にはどこの図書館がその資料を所蔵しているかを回答することである。学生の時分、図書館でアイヌの弦楽器トンコリに関する論文を求めたことがあった。その論文を所収している雑誌はその図書館では所蔵しておらず、検索の結果龍谷大学が所蔵していることがわかった。また大学図書館が所蔵していなかったアドルノの原書を求めた時も、調査の結果国立音楽大学が所蔵していることが明らかとなった。その後前者は複写を後者は貸借のサービスを利用することとなったのだが、これは後の副次的サービスの例として挙げることも出来よう。

 図書館の利用法の案内は普段の業務のなかでも自然と行われることである。貸出の際の手続きの案内に始まり、カードボックスからの資料の検索の方法、閉架資料の閲覧の方法などを案内するなど、その図書館を利用するための手続きを案内することは、思いのほか多い。

 情報の探索法の案内は、利用者が、自身で求める資料を検索する場合の手順を案内することと考えればよいだろう。最近はコンピュータなどが導入されその端末の利用法を案内することもこのサービスであり、また昔ながらのカードボックスからの検索法を知らせることも同じである。例えば今道友信の『東洋の美学』を検索しようとする場合は、著者名イマミチで著者名カードボックスから、或いは書名トウヨウノビガクで書名カードボックスからその情報を得ることが出来ることを案内することが出来る。またムジカ・ノーヴァという雑誌に所収された楽譜を調べたいという利用者に対し、当館が独自で作成している音楽雑誌のコンテンツ一覧を案内したことがあった。このリストを利用者に対して提示することはこの情報の探索法の案内に属し、このリストを作成することは次に述べる、二次資料の作成・提供に当たることはいうまでもない。

 二次資料の作成・提供は、書誌、レファレンス・ブックなどの既存の資料がない主題を扱う場合に、自館で独自にその主題に関する二次資料を作成することである。例として上に挙げた音楽雑誌のコンテンツ一覧がそれであれば、また日本人作曲家の歌曲作品を作曲者名から検索することの出来る冊子も作成されている。この様な歌曲は日本歌曲集といったオムニバス形式で所収されていることが多くカードボックスから検索するのが思いのほか困難なため、非常にこの検索ツールが役にたっている。

準備的サービス

 準備的サービスとはレファレンスに用いられるツールを整備し、情報の検索、収集が効率的に行われるよう準備することである。その内容はレファレンス・ブックの収集、レファレンス・コレクションの構築、インフォメーション・ファイルの編成、自館製ツールの作成、レファレンス・ネットワークの組織に分けられる。

 レファレンス・ブックの収集及びレファレンス・コレクションの構築は、その図書館の利用者が求める情報及びその図書館が有するに値する情報に即してレファレンス・ブックを選択、購入し、それらが利便性と効率性をもって利用されるよう構成することである。単体のレファレンス・ブックからでは通り一遍の情報しか得られないとしてももしそこに複数のレファレンス・ブックが有機的に関連しあいながらコレクションされているならば、一冊の資料から得られる以上の情報を得ることも可能となるかもしれない。このように、レファレンス・ツールをただ単に所蔵するだけではなく、それらが生きる排架などを工夫することも重要なレファレンスの一環なのである。

 インフォメーション・ファイルの作成とはパンフレットやちらしなどの資料を収集、ファイリングしまとまった資料として提供することも出来る。例えば演奏会の案内ちらしをファイリングしたならば、それは直ちにその年の演奏会の傾向、動向を知る重要な資料として利用出来るわけである。

 自館製ツールの作成は書誌索引などの二次資料を、既存のもので賄えない場合に、自館独自に作成することを指す。これは先に二次資料の作成・提供にて述べたことと重複する内容をもつため、ここでの説明は割愛する。

 レファレンス・ネットワークの組織とは複数の図書館における協力態勢の整備を指す。これは各図書館の所蔵する資料の相互検索、相互利用のシステムであり一館だけでは賄えないサービスを提供するのに役だっている。

 副次的サービスにおいては図書館間相互貸借、複写サービス、読書相談が挙げられる。図書館間相互貸借、複写サービスは先に情報の所在箇所の指示の項で例に挙げた、トンコリの論文の複写サービス、アドルノの原書の貸借サービスを例に挙げることで理解出来ると思う。その館が所蔵していない資料を所蔵する他館からこれらのサービスを用い利用者に提供するシステムである。

レファレンス・ブックの実例


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公開日:2000.08.23
最終更新日:2001.09.02
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