資料組織概説

「資料組織化の過程における各段階の課題について、使用ツールを中心にして概説せよ。」


 図書館において資料を組織化する意義とは、蔵書を体系的に管理し、利用に際しては秩序だった検索を可能にし、ひいては書籍一冊一冊だけではない、集合としての価値を生みださしめることである。このために、図書はある一定の主題により分類され、後排架されることとなる。以下、図書が排架されるまでの段階を順を追って見てみることとする。

 受け入れられた図書を組織化するその第一として、その書籍の目録を作成する必要がある。目録には各々の資料がもつ書誌事項、タイトル、著者、出版者、出版地、出版年、内容、価格などが国際的な書誌記述の基準であるISBDに従って記載され、これを特に記述という。そして、カード目録、コンピュータ目録であるMARCにおいて検索の手がかりとして用いられることになる各標目が記載されることとなる。これらの標目はタイトル標目、著者標目、件名標目、分類標目などの種類に分けられる。最後にその書籍が排架された後にその所在を示すこととなる、請求記号が付与される。これらを記入と呼ぶ。

 この目録作業に際しては、『日本目録規則1987年版改訂版』に準拠する記述ユニット方式及び『英米目録規則 第2版』に準拠する著者基本記入方式があり、各々に特徴をもっている。前者は標目とは無関係に完結した記述に標目指示を付加した記述ユニットを基本的な単位としており、各標目のカードを作成する際に記述ユニットを複製、各標目を記載していくものである。後者は基本記入標目に記述を加えたもの、著者目録として用いられるカードを基本記入とし、それらを各標目数だけ副出、各標目を記載して行くスタイルである。

 当レポートでは枚数の少なく、また内容の繁雑さを避けるため、前者の記述ユニット方式にしたがって展開していくこととする。

 目録を作成するには、第一にどのようなレベルの書誌的記録でもって記述の段階に移るかを決定しなければならない。資料が複数のタイトルをもつ場合、各々のタイトルごとに階層構造が生じていると考えるのが普通であり、その階層のどこに焦点を当て記述するかが問題となる。具体的にいうと、叢書名などを集合書誌レベル、単行のタイトルを単行書誌レベルと呼び、さらに書籍に所収される部分を構成書誌レベルと呼ぶ。これらのなかから、記述を記録する際の単位を選択することとなる。またこれは逐次刊行物においても同様で、逐次刊行物では逐次刊行レベルと単行レベルから選択されることとなる。

 書誌的記録に関するレベルの選択が終了してはじめて記述の段階に移ることとなる。記述は書誌的事項によって構成されることとなり、これは「タイトルと責任表示に関する事項」に始まり「標準番号、入手条件に関する事項」に終わる、八つの群に分けられる。これは『日本目録規則(NCR)』により示されるものであり、NCRはまた国際標準書誌記述(ISBD)に従っている。

 記述が完成すると、そこに標目を加えていくことになる。加えられる標目の種類は、先に述べたとおり、タイトル標目、著者標目、件名標目、分類標目、の四種類である。このうち著者標目は著者名典拠ファイルに、件名標目は件名標目表と件名典拠ファイルに定められる統一標目を用いるのが原則である。これは検索の際、本来同一の場所に集中されるべき資料が分散しないようにとの利便を考えてのことである。尚、複数種のタイトルを有する場合(翻訳ものや無著者名古典などにみられる)は統一タイトルを用いることとなる。

 先ほど述べた四種の標目種別各々にひとつづつの標目が与えられるとは限らない。すなわちタイトル標目であれば先に述べた書誌階層から複数のレベルが用いられることもあり、さらにはシリーズ名や並列タイトル、内容細目などがタイトル標目として抽出されることも充分にありうる。著者標目では著者が複数いる場合、あるいは訳者、編者がいる場合に同様のことが起こり、件名標目でも件名分出記入による複数の件名が生じ得、分類標目においても叢書やセットものを総体としての分類からも各個別のより細密な分類からも検索できるようになど、やはり複数の標目が生じる可能性がある。

 これらの標目は抽出された後に、標目指示として各記述の下部にタイトル標目、著者標目、件名標目、分類標目の順に記載される。その際にタイトル標目には t が、著者標目には a が、件名標目には s の各略号が冠された数字がふられ、分類標目では丸付き数字がふられる。このとき、件名標目を除いて、カタカナによって表記されることとなる。そして以後、複製されたカードに標目を記載する際に参照されることとなる。

 では実際に各標目の記載に移っていくことにしよう。

 タイトル標目では先ほど抽出した標目をすべて記載してゆくこととなる。尚タイトル標目では、著者標目、件名標目などとは異なり典拠ファイルを作成することはないが、長期にわたり刊行される叢書やセットものを整理する際に役立てるためのシリーズ典拠ファイルを作成することがあり、また先に述べた統一タイトル典拠ファイルを作成する必要もある。

 著者標目では責任表示として記録される個人及び団体、主な著作関与者を必ず標目とし、特定の版やシリーズなどの責任表示として記録される個人及び団体、副次的な著作関与者を必要に応じて標目とする。複数の名称を用いる著者がいる場合、各々の標目どうしの間に相互参照を作成し、同姓同名者がいる場合、各々の個人を区別するための生没年などの付記事項を記載する。

 件名標目では、その記載の前に主題分類作業が必要とされることを忘れてはならない。すなわち各々の資料が主題とする内容を抽出し、その主題を統制語と呼ばれる主題を統一的に表わすカテゴリーに分類してやらねばならないのだ。その際に利用されるツールとして件名標目表が存在しており(テキスト88頁参照)、この表と資料の主題を対照させて件名標目を決定することになる。この様に資料の主題から件名標目を決定することを件名作業と呼ぶ。すなわち目録作業をする図書館員は必然的に扱う資料の内容について吟味把握する必要性が生ずるわけである。

 そして分類標目である。分類目録を作成するにあたっては日本十進分類法を参照することになる。この分類法は0番の総記から9番の文学にわたる十の群(類)をさらに下位の十群(綱)にそしてそれをさらに十群(目)に分けるという方式であり、基本的に三桁の数字によって分類を表わす。さらに下位の分類を表わすときはピリオド以下にさらなる小目を加えていくことになる。

 以上のように作成したカードは、標目ごとに昇順にまとめられることによって目録として機能することになる。MARCではカードの代わりにコンピュータの利用できる形態にデータ化した各標目のデータベースを、コンピュータから検索するという形をとるだけで、基本的にカード型データベースの発典型であるということが出来よう。

 また、以上の作業に加え各資料に請求記号を加える必要がある。請求記号は資料を組織的に利用するには必要なものであり、分類記号の以下に受入順或いは著者記号や著作記号といったものを付加した図書記号を付け、最終的には資料を請求記号の順に従い排架してやらなければならない。つまり資料は排架された時点で分類ごとにカテゴライズされることになり、書架そのものが目録としての機能をも担うこととなる。


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公開日:2000.08.23
最終更新日:2001.09.02
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