2002年度のNHKテレビドイツ語会話は、以前までのものとはちょっと違っていた。出演者が増えた? 火曜日から日曜日に移動? いや、そんなことではないんです。もっと大きくて大切なこと。それは、Oskar Baron Fledermaus、フレーダーマウス男爵の存在だ。
テキスト4月号の出演者紹介では全く触れられていない男爵、あまつさえ「こうもり男爵」という記述さえ見られた。だがそんな冷遇に泣いた(?)彼も、5月号では表紙に登場。もちろん出演者として写真入りで紹介されたうえに、口絵写真にも姿が散見された。記述も「こうもり男爵」から「フレーダーマウス男爵」に変更されていた。
このフレーダーマウス男爵。旅行に役立つ一言を紹介するコーナーのホストとして登場するだけかと思っていたらさにあらず、フォトジャーナリスト、ウレシカのニッポン発見では、そのウレシカ嬢とドイツ語での軽快なトークを繰り広げてしまう。多少青ざめた顔に丸目とひげがチャームポイント。僕は彼を一目見て、その親しみ深い風貌の虜になったのみならず、折々発揮される博識、知性にも舌を巻くばかりなのであります。
テレビ慣れしていないためか、演技、表現という点では桂小米朝氏にははるかに及ばない。しかし、そのとつとつたんたんとした語り口こそが彼の味であり、飾り気のない口ぶりにのぼる冗談めかした言動が、わざとらしさがないだけにやけにおかしみをさそう。いたるところ細かに表現される彼の一挙手一投足にはどうしても注目せずにはいられない。申し訳ないのだけれど、小米朝氏やウレシカ嬢に向ける視線はないといった状況なのだ。
ちなみに、トランシルバニア出身とのこと。中国語の明明、輝輝博士にならぶ、NHK語学の人気キャラクターとして、ぜひ長命を保っていただきたい。
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