原題:Le FABULEUX DESTIN D'AMÉLIE POULAIN
2001年/フランス/121分
監督:Jean-Pierre JEUNET
配給:アルバトロス・フィルム
出てくるのは、一癖も二癖もある変わった人ばかり。それは、ヒロインのアメリにおいても変わらない。外界との接触を怖れて、自分のうちに醸成する夢の世界をこよなく愛する人たち。過大な望みよりも、今自分の手元にある日常を守ることの方が大事。そんな彼らを、傷つきやすい現代人の写しとしてみるのも無茶な話ではあるまい。世界の真ん中に出んがための争いに傷つくよりも、隅っこに引っ込んでなにごとも起こらないことを祈っている。でも、そういうことの空しさを知るのもまた彼らなのだ。ある出来事を経て、アメリは外の世界へ関わることを決意する。些細なきっかけが人生を仕合せに変えると、知ってしまったがためだ。
彼女の、世界への働きかけがふるっている。表だって動くことを好まない彼女は、こっそりと、あたかも靴屋の小人を思いださせるやり方で、他人の人生に関わっていく。時には小さな情報を流すことで、時には過去からの手紙を捏造することで、生きるということに後ろ向きだった人の背を、優しく後押しする。それはまさに無償の愛であり、密かに善行を積むという美徳にかなったものだ。だが彼女自身は、自分の夢の中に怪傑ゾロめいたイメージとともに、こもり続けていたのだった。彼女は、まだ自分の人生には踏み出していない。
ストーリーと登場人物が非常にキュートなこの作品。だが魅力はそこに止まらない。ぐいぐいと観るものを引っ張るアップテンポなのりに、しっかりとした構成が中だるみを許さない。暖色系の色合いはあくまで優しげなのに、大胆にして絶妙の構図が緊張感を醸している。フランス映画らしいあだっぽさも手伝って、あらゆる方面に楽しみを見つけることのできる、エスプリに満ちた大傑作になっている。
で、肝心のラストはどうなるの? その問いに僕は、情けは人の為ならずと答えましょう。あとは自分で確かめたほうがいい。その方がきっと、あなたにとって仕合せですから。
評点:4+
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