フル・モンティ

最後は裸一貫、まさにこの精神ですよ

原題:The Full Monty
1997年/イギリス/92分

監督:Peter Cattaneo
発売:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン(DVD)


 不況下のイギリス。主人公ガズも職を失って、職安に通う毎日だ。と、ここへ持ち上がるのが息子の養育費問題。これを払えなければ親権が奪われてしまう。この危機に対しガズのとった一獲千金の策というのが、近頃はやりの男性ストリップ。そもそもタイトルからしてフル・モンティ=全裸なのだからして、内容は推して知るべし。イギリス風のちょっときついユーモア満載、けれど笑いも感動もある良質コメディー。安心して親子で見られる一本です。

 ガズのろくでなしっぷりが最高だ。真っ当に働くでなく、一獲千金を夢見る無計画性。はじめは友人からも相手にされてなかった彼であるが、ひとりまたひとりと同志を増やしていく。本気で取り組む熱意と追い詰められた状況があれば、無茶な要求も通るということか? そうではあるまい。最初はどこかに自分の弱さを隠し持っていた彼らが、徐々に胸襟を開いていく。馬鹿にしあい敵対もしていた彼らが、自分の弱さを認めたうえで相手を受け容れていくプロセス。ひとつの目標に取り組み、同じ苦境に立ち向かうなかで深まっていく友情には素直に感動させられる(特にジェラルドが素晴らしい)。つまりは、虚勢を捨てるということ、そういう意味でもフル・モンティなのだろう。

 そして、文字通り身ひとつで戦う彼らを支えたものというのが、友情でありまた愛情であった。息子に向け、また向けられる情であり、コンプレックスそのものも包んでしまう妻の愛である。これらは、実際に苦境に身を置く人間にとっては実感できるものではないだろうか。辛い状況において土俵を割らない、揺らぐ自身を鼓舞して支える、最後の支柱として愛情というのはあるのかも知れない。

 とまあ、表現としてはちょっとあれな映画だけれども、描かれている内容はしっかりとしてむしろ正統的だ。B級のりをもったA級映画として、不況下にふさいでいる人にお勧めしたい。笑って、最後には元気出るですよ。


評点:4


耳にするもの目にするもの、動かざるして動かしむるものへ トップページに戻る

公開日:2002.08.08
最終更新日:2002.08.08
webmaster@kototone.jp
Creative Commons License
こととねは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 継承 2.1 日本)の下でライセンスされています。