フル・モンティ

最後はフル・モンティ、やっぱりこれが最高

原題:The Full Monty

日時:2002年8月29日19:00開演
会場:大阪フェスティバルホール
主催:関西テレビ放送/キョードー大阪


 価格に尻込みして一旦はDVDに逃げたのだけれど、やっぱり見たいものは見たい。というわけで行ってきました、フル・モンティ。

 実は筋に関しては多少違和感を感じないではない。女性の強くなった時代に、男性性を振るえなくなった哀れな男たち。彼らがどのように失われた自信を奮い立たせていくのか。このように捉えれば、フル・モンティは男性中心社会を懐かしんでみる時代錯誤的なものでしかない。ミュージカルにおいてはよりその傾向を強めているだけに、男根社会に対しアンチを表明する僕には面白くない――ただしこの評価は表面的に過ぎることをお断りしておく。

 フル・モンティの男たちは、果たして栄光の男性性を取り戻せたのであろうか――取り戻したとは言い難い、むしろ自分自身の駄目さを再認識するプロセスでさえあったといえるだろう。どこかしら欠けた男たちが、男性性という虚構から自由になってはじめて自信たっぷりに踊る。欠けたなにかを埋めあう仲間やパートナーの存在――ミュージカルでは映画以上にこの要素がふくらまされていて強く胸を打つ。妻や息子と分かち合う愛、信頼が、歌とダンスにのせられ深く情動を揺り動かし、そして最後にはフル・モンティ。現実の持つリアリティには強烈にしびれた。素晴らしかった。客席は興奮と感動のるつぼ――事実そうであったが、一部物足りないところがあったのが残念だ。

 観客の動員があまりにも少なすぎた。至るところに空席が目立ち、終盤の盛り上がりは平土間総立ちの熱狂にようやく支えられていた。ショービズは水物で、まさに開けてみてびっくりだったと推測するが、これだけのものを用意して入りがこれでは少々醒める。客席の大半を占めるS席を減らしてでも、安価な席を増やすべきではなかったか。コアなファンに支えられるのもよいが、より広範な一般客を得なければ観劇文化は先細りの一途ではないのか。正直もったいなく思っているのである。


評点:4


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公開日:2002.08.29
最終更新日:2002.08.29
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