原題:l'effrontee
1985年/フランス/97分
監督:Claude MILLER
主演:Charlotte GAINSBOURG
発売:カルチュア・パブリッシャーズ(DVD)
描かれているのは、ありふれてめずらしくもない日常の風景に過ぎません。家を、学校を、自分の境遇を嫌い、新しい自分を夢見る思春期の少女時代。自分らしさを獲得しようともがきながらも、自分自身に自信の持てずにいる不安定さと、それゆえ他人に向けられる少女らしい攻撃性は、かつて少女だったものには懐かしさをもって、今少女であるものには共感できるものであるのではないでしょうか。
ヒロインであるシャルロットは、学校では孤立気味の中学生です。そのため、引きこもり気味に同年代の子らを避けて、近所の病気がちの小さな子、ルルといつも一緒にいます。そんな彼女にとって、自分の理想像となったのが、同い年のピアニスト、クララでした。クララに魅せられながら、自分をより以上に卑屈に見てしまうものの、今とは違う自分、ここではないどこかに連れていってもらえるという甘い夢に憑かれるシャルロット。そのせいでいらいらを振りまいては、ルルやお手伝いのレオーヌと衝突を繰り返します。
そんなたびにルルはシャルロットを嫌いになったり、シャルロットはといえばルルをなだめすかしてみたり。本当は嫌いじゃないのに、仲のいいゆえ起こる二人のけんかを美しく彩ったのは、最後の二人のつながれた手だったでしょう。
自分の感情の起伏に振り回される少年少女は、今を否定して新しいものを求め、その中で本当に大切なことを、わかっていながら見失うというアンビバレンスに往々に陥ります。理想を見るばかりに、今手近にある大切なものを傷つけるジレンマこそが思春期、青年期の特徴といえるでしょう。
この時期を越えて再び今自分のいる世界と仲良しになれる瞬間が、夢のような時期の終わりを告げ、様々な方向にむかい分裂気味にあった自分が、ひとつに出会うという体験になります。こんな瞬間をいくつも経て、胸中に嵐吹き荒れた時期から凪へと移り、自分の今をだんだん好きになっていくのです。
評点:3+
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