ラン・ローラ・ラン

人生が二度あれば、いや一度といわず二度三度

原題:LOLA RENNT
1998年/ドイツ/81分

監督:Tom TYKWER
発売:ポニーキャニオン(DVD)


 人生が二度あればと歌ったのは井上陽水だけど、人生みたいに長いものを何度もやるのは、正直ごめんです。けれど、やり直したいところだけをピンポイントでやり直させてくれるのなら話は別。やり直したいことはいっぱいあります。

 恋人がピンチ! ローラはその恋人、マニを救いたい一心でベルリンの街を走ります。二十分でマニのところへいかなければ、そして十万マルクを用意しなければならないという緊迫したシチュエーション。ローラは立ちふさがるこの困難に、力強い疾走でもって応えますが、決まって不幸な結果に終わってしまうという人生の悲しさ。その悲しさを反則ともいえる愛の力でもって乗り越えて、ローラは再び走りだします。

 繰り返される同じできごと、出会う面々はどれも変わらないというのに、ほんのちょっと、その出会うタイミングが違うだけで結果がまったく異なってくるという面白さ。ひとつの出来事の結果が次の結果を決定し、あたかもドミノが倒れていくかのようにダイナミックに描かれる人生の妙は、一縷の可能性に懸けて動き出すことの大切さを畳み込みます。

 ローラは、「人生なるようにしかならない」といったようなニヒリズムとは無縁です。悟ったような顔をして手をこまねいているようでは、なにかを生み出すなんてどだい無理な話。ともかくはまず走り出し、最後まで強い意志を持ち続けたということが、あの奇跡的なハッピーエンドを迎えさせた原動力です。

 残念ながら、われわれは人生をやり直すといった、そういう反則技を使うことが出来ません。けれど、一度や二度の失敗であきらめムードに浸るようでは、最初から負けたも同然。人生は先が決まってないから面白いのであって、あきらめないかぎり終わりもありません。決まってない未来に向かって何度でも走る。そのひた向きに、あきらめ悪く走るという姿勢が、妙にお利口さんになってしまった僕たちには、なによりも必要なんですよ。


評価:4


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公開日:2001.04.04
最終更新日:2001.08.29
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