ロッタちゃんはじめてのおつかい

元気な子には暖かな態度で

原題:LOTTA FLYTTAR HEMIFRAN
1993年/スウェーデン/1時間26分

監督:ヨハンナ・ハルド
原作:アストリッド・リンドグレーン
発売:アスミック(DVD)


 ロッタちゃんです。やっぱり利かん気で、セーターのちくちくがいやでお母さんとけんか。家出までしてしまいます。けれど、家族もなれたもので、ロッタちゃんの家出先を訪れては、クリスマスまでには帰ってきてねと。クリスマスはまだまだ先です。けれど、夜中になって闇や物音が怖くなってきた頃を見計らってお父さんが迎えに行くと、一件落着。娘が帰りやすいように、そして素直に謝れるような空気を、お母さんと一緒に作り上げてしまいます。そのあたりに、素敵に成熟した家庭の文化がうかがえて、うらやましく思ってしまいます。

 この雰囲気、空気はロッタちゃんを取り巻く大人、みんなが持っているものです。隣のベルイさん、おかし屋のおじさん、ゴミを集めに来たおじさんもみんな、ロッタちゃんを子どもあつかいせず、きちんと相手にして話しています。あまりに大きくない町で、みんなが知り合い。会えば挨拶をかわしあう。わたしたちの世界にも、きっとこういうふうに互いを受け止めあっていた時分があったでしょう。子どもが子どもであることを許し、大人になることをせかさない。自然に育つのを見守って、しっかりとその目をのぞき込む。素敵な地域、素敵な家庭だと心から思います。

 いつまでも変わりなく続きそうなロッタちゃんの町ですが、時間はやっぱり過ぎて、去る人も出てきてちょっと切なくなることも。けれど、その人のいう「君は元気な子だろう」という言葉が、この作品の色をしっかりと決めつけて、悲しさでさえもほがらかで暖かな喜びに染め上げるよう。それら言葉や優しさを一杯に浴びて、ちょっとやそっとのことではくじけずに、真っ直ぐにものを見て、きちんと対処していけるロッタちゃんはじつに立派ではありませんか。大人たちの懐の広さを受け継いで、それに応えるかのようで、見ているだけで嬉しくなるのです。

 元気な子どもには暖かい環境がいるのですね。僕は、そんな大人になります。


評点:4


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公開日:2001.05.06
最終更新日:2001.08.29
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