原題:Чебурашка
1969-1974 (1983)年/ロシア/1時間4分(約10分)
監督:ロマン・カチャーノフ
発売:クロックワークス(DVD)
なによりもまず、チェブラーシカをはじめとする登場人物たちが可愛いのである。オレンジの箱に入って南の国から来た、猿でも熊の子でもない学問上正体不明のチェブラーシカに、アフリカわにのゲーナ。そして怪盗おばあさんのシャパクリャク。全員が全員、個性的でチャーミングで、それにどこか寂しげな雰囲気を持っているのがいい。各話にゲストとして出演するガーリャやトービク、ピオネールの少年たちも、それぞれが個性的でとてもいい。子ども向けのパペットアニメーションなので作りも話もとてもシンプルだけど、それだけじゃない味わいがあるんだ。僕が思うにその味わいというのは、ロシア特有の憂鬱や悲しさに起因している。いや、それほど僕はロシアに詳しいというわけでもないんだけれども。
映画は1970年代ごろの制作だが、チェブラーシカやゲーナの持っている寂しさを、今の僕たちも共感できるのではないだろうか。彼らの友達を欲しがったりピオネール(ボーイスカウトみたいな組織)に入りたいと思う気持ちは、僕らのどこか心が繋がっていないという寂しさに似ていると勝手に思っている。この映画を見ることで、僕らは自然に彼らに近付いていくのだ。
チェブラーシカたちは、まず自分の欲求を満たそうとして活動をする。だが自分のためにとして始まったそれらが、決まって誰かを仕合せにするというのはなんて素敵なことであろう。意地悪なキャラクターもいます。けれど利己的ではなく、自分とそして自分と同じ境遇にある同胞のために働くという、その活動の純粋さに目をとめておきたい。無私無欲ではありえない我々が、それでも人のために働ける可能性があればよいと(そして自分も仕合せであれればよいと)、純粋に思う映画なのだ。
映画一本一本は、二十分程度の短編といっていいくらいのサイズ。けれどこれくらいのサイズがむしろ見やすい。アニメーションも出色。ロシアの哀愁漂う歌もまたいい。
評点:3+
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