原題:True Crime
1995年/アメリカ/95分
監督:パット・ベルダッチ
主演:アリシア・シルヴァーストーン
この映画はすごい。まさに確固たるB級の地位を築き上げている。筋も演出も音楽も。すべてがB級の匂いをぷんぷんさせていて、心の底からわくわくしてしまった。かなり旧い映画というのならともかく、1995年の作品という中途半端な新しさもよい。どこかにひっかかるところがあれば、それだけでもう充分。僕の場合は、主演女優が、そのひっかかりだった。
主人公マリーは、探偵趣味の女子高生だ。父親が警察官で、オフィスに忍び込んで証拠探しをするという、むちゃくちゃさかげんからして魅力的(女の子も、映画も両方ね)。そんな彼女が、街で起こった猟奇的殺人事件を調査する。そこには恋あり疑惑あり、サスペンスあり。もちろんどんでん返しもあって、それがまた何度も何度もひっくり返されるもんだから、最後には一番ありきたりのラストになってしまうというところがやけに悲しさを誘ってしまって笑える。けど僕は、そういう愚直さがこの映画の魅力なのだと信じている。
愚直さは、ラストだけではないぞ。ヒロインの造形も、設定も、音楽も、すべてから制作者の律義さがにじみでてきて、本当は悲しい映画なのになぜかほほ笑ましい。あまりに実直なものだから、ついでにいいたいことなんかも実によく分かって、でもそれはドラマから立ち上がるなにかではないのだな。いや、よく分かるよ、よーく分かるんだけどもさ、でも作品としてはどうだろうか…… そんな感じのよく分かるなのだ。だからきっと、制作者はいい人なんだと思うよ。
残念ながら、ビデオはもう絶版している。DVD化されることもないだろう。人知れず、話題にもならず、ひっそりと現れて消えてゆく。中途半端で目立ちもしなければ、大衆受けなんてするはずもない。そういうつつましさがB級映画の魅力であり、僕はこの映画にこそそれを感じた。そういう意味で、これは通好みの映画かも知れない。でも、はっきりいえば、悪食かも知れないな。
評点:3+
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