『夫婦な生活』1から2巻
おーはしるい
(MANGA TIME COMICS)芳文社,2000- 年。
サラリーマンの夫と専業主婦の妻の、お気楽で楽しげな日常がのほほんと描かれていて、見てるだけでなんだか楽しい。夫婦ふたりの暮らしにおける問題点があらわにされるわけでも、生活に役立つ知恵、こつ、工夫が紹介されているわけでもない。といえばちょっと嘘になるかな? というのも、このみえこ、としゆき夫婦の間にある愛情そのものが、家族仲よく暮らしていくためになにより大事なものなんだから。夫婦の暮らしにおける、もっとも大切なことが描かれている漫画ともいえるわけだ。それは本当に自然なもので、こうやってふたりで、こうやって一緒にいられる相手がいるなら、結婚してもいいかな――と思ってしまう危険性がある。うん、意外や結婚に憧れさせてしまう漫画なのだよ。
ただし、描かれている夫婦、家族の構造は、あくまでも保守的。夫は仕事、妻はうちで主婦という構造は、今の時代にそのままあてはめるには、あまりにお気楽あるいは因習的といえるだろう。すっとこどっこいで可愛い(本当に可愛い)妻に困る夫という構図も、ありきたりといえばありきたり。なんら新しさもなく、むしろ女性解放の世相に対し毒であるともいえる。だがこんな本作が僕にとってこんなにも喜ばしいのは、時にラジカルな女性解放的傾向を見せる僕にも、旧来の夫婦の構造に対する憧れがあるからなんだろう。意外な内心が明らかになってしまった。
大きな事件が起きるわけでも、怒濤のドラマが展開されるわけでもないので、そういう派手なのが好きな人には絶対薦められない。苦労や不和も少しはあれど、楽しいばかりが目立つところは、下手すればごっこだ。でも、いずれ日常に落ち着く暮らしを楽しみやおかしみに彩る才能があるのなら、結婚はきっと楽しい。というわけで、この漫画を読んだ後の僕はいつも結婚に乗り気だ。できればみえこさんの位置におさまりたいと思っているところが、普通とはちょっと違うんだろうけど……
評点:4
耳にするもの目にするもの、動かざるして動かしむるものへ トップページに戻る