『ホセ・ルイス・ゴンサレス ギター・テクニック・ノート』
ホセ・ルイス・ゴンサレス(手塚健旨訳)
現代ギター社,1984年。
食堂でウクレレを弾いていたときに、ギター科の卒業生が教えてくれたのがこの本。ギターの基礎的なテクニックを身に付け、指を鍛え上げるのによいと彼が言っていた通り、この本を習得することでギターの基礎をしっかり身に付けることができる。弦を押さえる左手の拡張、弦を弾く右手の強化など、十一章にわたる練習のそれぞれは単純で、それゆえ難しい。この本の内容をマスターすることは、ギターと長く付きあっていくうえでの大変な助けとなってくれるだろう。
元来がクラシックギター向けの教本であるため、練習内容はクラシックギターの基礎ということになる。指板をしっかりと押さえ正しく弾くことの練習が続くが、音楽において最も難しいのは意図したとおりに音を出すということであるのだから、ギターの入門段階でこの本を得た私は大変な幸運者であった。
私が弾いているのはクラシックギターではなく、ポピュラー音楽で多く用いられるアコースティックギターとエレキギターである。フラットピックを使ってのカッティングなどは当然この教本では扱われないため別の本ないし方法に求めるしかなく、またこの教本は主にメカニックについてを問題とするため、表現のための練習となると別の教本ないし手段に頼らなければならなくなる。だからこの教本を下敷きとしつつ、別の表現のための教本を並行して用いるのが効果的である。高度の表現を目指すときには常に基礎力が問われることとなる。その基礎を築くのが本教本である。
なおこの教本はギターのテクニックの教本であるため、楽譜の読み方やギターの構え方といったことは扱われない。書かれているのは楽譜と押弦する指記号、弾弦する指記号、そして少しの注意書きだけである。だからギターの初心者に勧めることはできても、音楽の初心者には勧められない。独習には厳しいので、ギターを通して音楽に入門しようと思う場合は、よい教師を探すのが早道と思われる。
評点:4
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