『まるごと川原泉』
川原泉
メロディ9月号増刊(2004年)。
メロディ増刊でまるごと川原泉というのが出ていて、ちょっと迷ったけど結局買ってしまった。基本的には単行本の焼き直し。けれど合間合間に書き下ろしだとか企画だとかがあって、それだけでもうすごく嬉しい。これがファン心理というやつだな。まあ、病気みたいなものと思ってお呉れ。
さて、企画のひとつに「川原流スローライフの掟」というのがあって、これが実に振るっていた。川原泉の人生観が分かる。作品から現れる川原らしさを再確認するようで、川原漫画を愛する私は実に共感して読んだ。曰く、自分を喜ばせるために生きよ、隠居の心で生きよ、自分が好きなものにはこだわれ、などなど。しかしこの人は、私なんかよりもずっとしっかりとして、前向きな健やかさを感じた。適度に他人のいる環境に住めと川原はいう。しかし私は、人の世よりもなお住みにくかろう人でなしの国に孤独黙然と閑居したい。不善をなすに違いないが、それが誰の迷惑にもならない遠くにいきたい。こんなに駄目な私だからか、川原泉の十箇条はとても尊いものに思えた。この人のいうよう、中庸を重んじ、度を過ごさず、足ることを知る精神が、人間として暮らしていくには大切なのだと反省した。
ところで川原はちっともそんなこといってないんだが、この十箇条を読んで、無心に結婚したくなってしまったのだった。いや、川原と結婚したいといってるわけじゃない。そこまで駄目にはなってないつもりだから安心して欲しい。私は、自分の今、誰のためにも生きていないことがつまらなくなってしまったのだ。自分のために生きているといえるほど、自分はまっすぐではない。その日が過ぎるのを遠くから眺めるような寂しさが、急に胸に迫ってしまったのだ。こういうことはたまにあって、すると決まって、誰かと一緒に暮らし、その人のために生きたいと思うのだ。
まあ、相手は常に居らんから、ほっときゃ冷める一時の熱病なのも常なんだけどね。
評点:3
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