『ラディカル・ホスピタル』1から2巻
ひらのあゆ
(MANGA TIME COMICS)芳文社,2000- 年。
病院ってなんて面白いところだろう、といってしまえば軽率に過ぎるけれども、この漫画を見ているとそんな気にさせられてしまう。出てくる医師、看護士、患者も、ちょっといない楽しい人ばっかりで、こんな病院ならかかってみたい、というのはさすがにちょっとあぶないか。
漫画なので、誇張、デフォルメは確かにあります。けれどおそらくはきちんとした取材の上で描かれていて、いっくらなんでもそれはないだろう、ということは意外とありません。漫画らしさを飾る部分を取ってしまえば、けっこうこんなこともありそうだというエピソードばかり。コメディタッチで描かれる登場人物たちも、一人ひとりの性格が実によく立っていて、本当に身近にいそうな感じさえしてきます。ありそうなんだけどなさそう、なさそうなんだけどありそう、その虚実を縫うバランス感覚が面白いのです。
四コマ漫画なのでテンポ感があって小気味よく読み進められるのに、一回一回はテーマごとにまとめられていて、読んだ後に残っている自然な手ごたえが、この漫画が面白いばかりでないことを証明しています。それぞれのテーマ自体は非常にオーソドックスなもので、病院医療を扱うものならどれでも取り上げそうなものが多いとはいえ、それらを調理する作者の腕が確かなためか、間違いなくオリジナルの味を持っていて、何度読んでも飽きがこない。読むたびに面白く、ああこんな病院にかかってみたいと、あぶないことを思わせてしまうのです。
実際、病院にもよるのでしょうが、医師や看護士の皆さんは良い雰囲気でもって患者に接してくださっていると思います。決して楽ではないハードな仕事なのに、そういうことはおくびにも出さずにいらっしゃるのは、さすがにプロであると関心するところ。この漫画ほど面白い病院はなくても、いい線をいっているところもあるのなら、自分は迷惑をかけない楽しい患者になりたい。読むたびにそう思うのです。
評価:3+
耳にするもの目にするもの、動かざるして動かしむるものへ トップページに戻る