Pocket biscuits “Yellow Yellow Happy” (TODT-3782)
番組内企画で生まれたバンド、ポケットビスケッツの代表作にして大ヒットを飛ばしたこの曲。この曲を聴くと、うつむいて過ごした辛くて長い日々を思いださずにはいられない。
この曲がリリースされたのは1996年。僕は大学の四回生だった。卒業論文を目前として、僕は迷走していた。プレッシャーから逃げるため、様々なことに手を出していた。携帯ゲーム機を買ったのもこのころなら、この曲にはまり、二六時中聴きまくったのもこのころだった。
ボーカルの千秋のキャラクターに引かれたのもあったが、この曲の持つ歌詞内容がなによりも僕を捕えていた。「生まれ変わってもまた私に生まれたい」と言わせるだけの自分への求心力と、自分が本当に欲しいものを手に入れるために踏み出される一歩。そのどちらも僕にはなかったものだ。
僕が選んできたもの。それは、与えられた選択肢の中から、その都度選んできただけのものに過ぎない。自分が得たいと思ったものもあったけど、それもその時の選択肢のひとつでしかなく、その夢にくじけて流れてきた今も、目の前の選択肢から選んだもの。僕は、選択肢からではない、本当に自分が心から得たいと願うものを持たず生きてきてしまった。欲しいものを得るために戦い、勝ち取ってきた。そういう経験を持たない僕は、生まれ変わりを望まない。
しかし、この歌の主人公は違うのだろうなと思う。自分の願い、望みを叶えるために常に前向きに立ち向かってきたんだろう。その自信が、自分が自分であることを支え、生まれ変わってもまた、と思わせるのだろう。
僕は、この曲をプレーヤーに入れ、リピートの大音量のなかで論文を書き、過ごした。結局その論文は、卒業にはどうにか足りた、というていどの失敗作でしかなく、僕はまた迷ったけど、今はちょっとやりたいことがあるんだ。
それを、今度こそ一生懸命やったら、生まれ変わってもまた、と思えるようになるかも知れない。
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