Aqua「カートゥーン・ヒーローズ」:『アクエリアス』(MVCE-24210)所収
Aqua “Cartoon Heroes” in: Aquarius (MCA Records: 157 305)
キュートという形容がぴったりのこの曲。本当に可愛い、元気そのものといった歌で、聴くたびに背筋が真っ直ぐにのびる。日常にまみれるなかで忘れ去られる、現実を超えて遊びはじめる心。僕らはそれさえ取り戻せれば、どんな瞬間、どんな出来事にも、楽しみ、浮き立つことができる。この歌には、多分誰もが持っていたろう、身の回りのあらゆることを遊びに変える子どもの魔法が、ありったけ、ありのままに詰まっている。
子どもだったころを思いだしてみようよ。だだっ広いだけの校庭に宇宙空間を見なかったか、薄暗いばかりの学校の廊下に迷宮を見なかったか? つまらない日常の空間に、想像の破片をちりばめて、一瞬で自分たちの遊び場に変える能力が、僕らにはあったはずだ。僕たちは、想像の力でもって、現実の存在を超えるや、自分の憧れるヒーローそのまま、縦横無尽の活躍の末にきっと勝利を勝ち取ったのではなかったか? はたから見ればただの子どもで、時間が来れば魔法の威力も切れるのが常だっただろうけれど。
子供の魔法を失った今でも、僕らは漫画に望むヒーローを見つけては、自分の望みの肩代わりをさせている。「私達がしてる事はあなたにはできない事」と、あからさまな彼らの優位を心のどこかに感じ取りながら、それでも一時、現実を離れ、想像の世界に遊ぶこともできる。そして僕らは、ほんのわずかでも子どもの魔法を、そこから持って帰ってきてしまうのだ!
彼らがしてる事は僕にはできない事ばかりだけど、僕には僕のできることもあるはずで、それは僕がやらねばできないこと。ぐちぐちと文句をいってる暇があったら、胸を張って前へ進もう。出来る出来ないでは関係ないよ。憧れる自分になるには、子どもの魔法を振り絞って進めばいいだけの話じゃないか。
だから、僕はこの歌を聴きながら、子どもの魔法をいっぱいに蓄えたい。そして次には精一杯、きっと真っ直ぐに歩き出してみせるよ。
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