二年生鑑賞教材
武満徹(1930 - 1996)
武満徹は、日本を代表する作曲家であり、かつ20世紀を代表する作曲家である。しかし、その知名度は、彼の母国である日本において、著しく低く、一部のクラシック音楽愛好家の、さらに一部において知られているにすぎないという現実がある。しかし、武満の作曲は、決してそのような一部だけでしか通用しないものではなく、より普遍的に鑑賞、聴取されるべき音楽なのである。
武満の音楽は、一般的に「現代音楽」といわれるジャンルで有名である。しかし、彼の音楽はその一部のジャンルだけではなく、親しみやすい「合唱曲」、「映画音楽」、「ギター曲」など、多岐にわたっている。むしろ、彼の愛していた音楽は、後者のような、一般に親しまれる音楽ではなかったであろうか。
今回の鑑賞では、武満のその二つの側面を概観することとする。
この曲は、1957年に東京交響楽団の委嘱によって作曲されたものである。この曲が彼の初めてといってもいい、大規模なオーケストラ作品である。しかし、この曲により武満は国際的に高い評価を得ることとなる。
武満自身の言葉によれば、この曲は西欧的なものを目指したのではなく、「はじまりもおわりもさだかではない。人間とこの世界をつらぬいている音の河の流れの或る部分を偶然にとりだしたもの」であるという。
1996年2月20日に65歳という若さで没した作曲家のために、世界中の指揮者、オーケストラが追悼の意を込め、演奏した。
このこの合唱曲集は、武満が過去に作曲した歌曲の合唱編曲、オリジナルの合唱曲、武満により編曲されたものによって構成されている。
「さくら」は武満によって編曲された日本古謡、「○と△のうた」は1961年の映画、「不良少年」のなかで歌われたものを合唱に編曲したもの、「死んだ男の残したものは」は1960年に合唱曲として書き起こされたものである。「翼」は1982年の演劇「ウィング」で歌われたものであり、その合唱編曲を、ポップスに編曲したものを収録した。「○と△のうた」においても、ポップス編曲を収録した。