1884年に、パリ音楽院のコンクール用に作曲されたこの作品は、アパッショナート(情熱的)というよりむしろ、しめやかさを感じさせます。左手は軽快にリズムを支え、滑稽味ある走句が自由にかけめぐります。しかし、時折り垣間見せる憂鬱さや静謐さが際立って、美しく、作曲者の持つ叙情性が充分に発揮された一曲です。
一台のチェロで弾くために書かれた六つの組曲の、第一番を飾るのがこの曲です。カザルスによって再発見されてより、重要なチェロのレパートリーとなっています。親しみやすいフレーズに隠された力強い構成力は、多くの奏者に影響を与え、愛好されてもきました。
本日は、サクソフォン用に編曲されたものをおおくりします。
初出:演奏会曲目解説「第3回 マルティ・パーパスコンサート」大阪,吹田市文化会館メイシアター,2001年9月23日。