僕のお絵かき計画 > Flash 大作戦 > グループ化したオブジェクトって? #2
予告していたとおり、オブジェクトとグループ化ということを説明したいと思います。
一般的なドローソフトでは四角や円などを扱うのが得意だといっていました。そしてその引いた線や四角、円を自由に配置して、レイアウトを作るのが得意だといっていました。
まずは例をお見せしましょう。1997年の年賀状で使った牛の絵をばらばらに分解してみました。
牛の分解を見ると、円や四角などの部分を組み合わせて牛の顔が作られているということがよくわかるかと思います。それらの部分は各自独立していて、例えば耳を大きくしたければそれだけ拡大してやることも、角を縮小してやることなども自由にできるのです。
また、顔の輪郭線をもっと太くしてやることも、色を赤くするのも簡単です。
これらドローで扱う部品の最小単位をオブジェクトというのです。例えば一本だけ引かれた線もオブジェクトなら、四角や円のひとつひとつもオブジェクトであるわけです。
それらのオブジェクトは、さっきいったように、各自独立して扱われます。それぞれは前後の概念を持っていて、つまり前にあるオブジェクトは、後ろにある別のオブジェクトを覆い隠してしまいます。牛の顔の場合、白い円の目は黒のぶちより前に置かれているので、その白い円の部分が黒の地を覆い隠しているということもいえるわけです。
この前後の概念があるというのも、ドローソフトの特徴かと思います。
さて、オブジェクトについてはこれでわかりました、というかわかってください。牛の顔は、オブジェクトと呼ばれる円や四角形などの寄せ集めで出来ているわけです。
では、このオブジェクトの集合体である牛の顔を、他のオブジェクトである文字やペイントと組み合わせて、年賀状の最終的なレイアウトを作ろうと思ってください。
文字の位置をこの辺にして、住所や名前はここ、じゃあ牛の顔はこの辺にしよう、という感じでそれぞれマウスで引っ張って、レイアウトを決めていくことになります。その時に牛の顔の各部分――オブジェクトは独立しているので、牛の顔のかたちを維持したまま移動させようとすると、いちいち牛の顔の全オブジェクトを選択してから動かさなければなりません。それを忘れると、目だけが動いてしまったり、耳を選択し忘れて置きっぱなしにしたりすることもあり得るわけです。
いちいち全部選択するなんて面倒なことはごめんです。だから、牛の顔のオブジェクトを全部まとめてしまいたいな、と考えるようになってきます。この、複数のオブジェクトをまとめて、ひとつのオブジェクトとして扱えるようにすること「グループ化」というのです。
グループ化すると、幾つものオブジェクトをひとつのものとして扱うことが出来るようになります。だから、目だけ動いてしまうことも、耳を置き忘れることもなくなります。そして、グループ化した後に、また耳だけとかの修正をしたいと思ったら、グループ化を解除して、オブジェクトをばらばらに戻してやることも出来るのです。
さっきの牛の分解は、1997年の年賀状の、JPEG に書き出していない元のデータから、牛の顔以外のオブジェクトを消してしまって、その後で分解したわけです。
牛の顔は、さっきいったようにグループ化してまとめてしまってますので、グループ化を解除してから、ばらばらにしています。
ドローの便利なところは、元のドローデータさえ残っていれば、後から別の用途に再利用しやすい、ということです。今回は、ドローの説明のために、オブジェクトをばらばらにすることが出来ました。もしこれがペイントデータだったら、今回やったよりももっと大変な作業になったはずです。
これは、面倒くさがり屋の僕のことですから、ペイントデータだったらきっとこういう大変なことはしなかっただろう、ということです。
さて、Flash の話に戻りましょう。
Flash はドローソフトでありながら、ペイントソフトのように線を引くことが出来ます。自由な手書き感覚で引いた線が瞬時にドローオブジェクトに変換されるのです。
前回書いたこの文章も、今ではどういうことかもうわかってくださると思います。
自由に書いた手書きの線をドローオブジェクトに変換してくれるということは、つまりドローが苦手だといっていた手書き風のイラストを描くのが、非常に楽になるということです。
また、ドローオブジェクトの特徴として、前回、後からの修正や大きさの変更が楽だということもあります。これは Flash でも同様で、うまくかけなかった線でも、場所をずらしてみたり、丸みを持たせるために引っ張ってみたりして、気に入るかたちに整形することが出来るということです。
これは手書きのイラストでは不可能なことです。いっぺん引いた線を気に入らないからといって曲げてみたり、色や太さを変えたりはちょっと無理な相談です。ですが、この Flash ならそれが出来る。やり直しも出来れば、いっぺん描いたものの修正も出来る。僕が Flash を素晴らしいソフトだということが少しはわかってくださったでしょうか。
では前々回(Flash でアニメーションに挑戦)でいっていた、女の子を「動かすことが前提なので、帽子、髪、顔、体、リボン、手、脚のそれぞれをグループ化し、それらオブジェクトを組み合わせています」ということを、さっきの牛でやったようにして、説明してみましょう。
女の子は、帽子や髪、顔などの部分が集まって出来ていることがわかります。もっと詳しくいうと、帽子や髪などもさらに、一本一本の線や塗りの部分などに分解することが出来ます。
こうしてオブジェクトとして管理できるということは、それぞれのオブジェクトの位置を変えたり、大きさやなんかのバランスをとったりするのがとても楽になるということです。
ペイントソフトでも、レイヤーという機能を使えるものになると、ちょうどアニメのセルを重ねるようにして、それぞれのレイヤーごとに管理できるようになります。ですが、レイヤーをたくさん重ねると、使用メモリやファイルサイズが非常に大きくなります。
ところがドローソフトだと、レイヤーを用いるよりもずっと小さなサイズで画像を作成することが出来るのです。しかもオブジェクトごとに管理できるので、手を上げたり脚を歩いているように動かすことも、簡単です。髪のパターンを増やすと髪形を自由に変えることも出来て、バリエーションを持たせるのも簡単になってきます。
それに、これからアニメーションとして展開していくことを考えれば、腕や脚の位置を変更して歩いている格好にすることも、さほど難しいことではありません。
このように、オブジェクトとグループ化をうまく活用することで、非常に効率良く絵を描いていくことが出来る、というドローソフトの利点についてお話しました。とくに、Flash はドローソフトの良さをもちながらペイントソフト風に絵を描けるという、非常に希有なソフトです。Flash の前身にあたる Smart Skech に初めて触れたときの感動は、今もって忘れ難いものなのです。