妖怪ピック隠しという現象

 ギターを弾く際に使う道具、ピックがどこかにいってしまう。気をつけているつもりなんだけれど、気づくとなくなっている。いったいどこに消えたのか。こうした現象に悩んでいるギタリストの間で、まことしやかに語られている言説がある。妖怪ピック隠しだ。日本には妖怪ピック隠しというのがいて、ギタリストがふと気を抜いた瞬間に、さっとピックを隠してしまう。いや、もしかしたら西洋にもいるのかも知れないが、残念ながら私は西洋妖怪については詳しくないので、ここでそれを語ることはできそうにない。

 妖怪ピック隠しは、赤いピックは好きではないらしい。そういう話を聞いた。優秀なピック隠しは、スタジオの受け付けで買ったばかりのピックを、さあ弾こうというまでの短時間で隠してしまうらしい。おそろしいことだ。ギタリストは、妖怪ピック隠しに狙われている。

 昨日のこと、練習し終えて夕食をとろうというとき、ふとピック箱を見たらどうも1枚足りなくなっている。GibsonのThin。2枚あるはずなのに、1枚しかない。おかしいな。何度数えてもない。ピックが足りない。そういったら、ファイアーボンバーのアルバムジャケットに貼り付いてるんじゃないか、いや、しかし私はやつの歌は聴いていない、その線は薄い。ジーパンのポケットに入っていることが多い、ふむ、ポケットをさぐってみたけれどやっぱり見つからない。ダウジング、最初にふりこをさがさないと……。ギターケースを開けてみたけど、そこにもなかった。本当にどこにいったのだろう。そう思ってあきらめたところ、寝ようとする直前に発見。ゲーム用のWindowsノートの上に置いてあった。なんで!?

 なんの気なしに、ぽんと置いて忘れてしまったんだろう。ピックは本当に意識していないと忘れがち、軽視しがちな小物だから、今回もそんな感じにやってしまったんだろう。しかし、こうした現象に直面したとき、人は妖怪ピック隠しを思うのだ。妖怪ピック隠し、一説には能ある鷹ともいわれるが、その存在は今も謎に包まれている。


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公開日:2009.07.02
最終更新日:2009.07.02
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