カポタストを買った。Kyser社製のワンタッチで取り付けられるものだ。ばね仕掛けのクリップみたいになっていて、2本にゅうっと伸びたハンドルを握って開き、指板を挟んでやる簡単設計だ。百聞は一見に如かず。メーカーページに写真があるから、まあ見てつかあさい。
Kyserを選んだのには理由なんてない。これ以外に選択肢がなかったのだ。なぜか? 人気のカポは他にもあるのに。それは追々話すとしよう。
人気のカポというと、Kyserもそうだが、Shubbのものなんかも定評があって、多分こっちを使っている人のほうが多いと思われる。他にもいいといわれるのだと、Jim Dunlopが扱うVictor Capoなんかもそうだ。ちなみに前者ふたつがワンタッチ装着タイプ。Victorはねじでしめていくタイプだ。
こんなにもいいカポはたくさんあるのに、しかも楽器屋店頭には全部揃っていたというのに、なぜKyserしか選択肢がなかったのか?
それは私の馬鹿なアイディアのせいである。
なんでここにDADGADが突然出てくるのか? 実は関係があるのである。まあ、ちょっと聞いてつかあさい。
DADGADというのはギターの調弦法のひとつで、レギュラーのEADGBEに比べると、第1,2,6弦が1音低い。私はというとチューニングが面倒くさいものだから、DADGADをちょっと練習してみたいとおもっても、せっかく合わせたEADGBEを崩すのが嫌で、なかなかその機会を持てない。だから、チューニングなしでDADGADを実現できる方法を考えていたのだ。
ちょっとした逆転の発想だった。第1,2,6弦を1音下げるのではなく、第3,4,5弦を1音あげればいいのだ。あげるといってもチューニングするのではなく、カポを使えばいい。3,4,5弦だけを押さえられるカポを第2フレットにつけたらEBEABE、つまりDADGADの2カポと同じになる。いい考えだと思った。
楽器屋にいって、3,4,5弦だけを押さえられるカポはあるかと聞いたら、あったのだなこれが。これがKyserのShort-Cut Quick-Change Capoだ。
楽器屋でちょっと試さしてもらうと、確かにDADGAD的響き! すばらしい、これください。これでいちいちチューニングしなおさなくても、DADGADギターの練習ができるというものだ。
ところが、これが大失敗。そりゃ考えれば当たり前なんだが、開放でDADGAD2カポになったとしても、同フレット上では依然レギュラーチューニングのままだ。つまり、DADGAD的響きは開放でしか得られないわけで、ハイポジション(というか開放以外)はレギュラーなのだ。
しかし、こういう特殊なカポが普通に売られているということは、そういった需要があるということで、説明書きを見れば、つまり最近の音楽でよく用いられるコード、E, F#m, A, Bを極めて簡単に押さえることができますよ、ということらしい。開放弦を利用して、これまでなかったハンマリング・オン・プレイもできますよ、ということらしい。
いずれにせよ、買ってしまったものだから、今更返品なんてできない。なんとか使いようを考えてやらないといけないなあ。
Kyserのカポは、実際脱着が簡単だ。ハンドルをぐっと握って、挟んでやるだけでいい。微調整も楽。これは確かに人気のあるのもわかる。
ただばねはちょっと強めだ(そりゃ、弦を押さえるんだから当然か)。私は握力が弱いので、これを開ききるのがちょっと大変で、確かに着脱は簡単だが、頻繁にやると疲れてしまう。だからこれをお勧めできるのは、握力の強い人。標準の男性くらいなら、多分大丈夫。女性だとちょっときついかも知れない。そんな感じだ。
Michael Eskinという、トラディショナル・アイリッシュ・ギタリストがお勧めするのがKyserカポだ。Irish DADGAD Backup Guitar Resourcesでこんな風にいっている。いい加減訳でお送りしよう。
私が好きなカポは、Kyserの12弦用のものだ。スタンダードのカポよりもちょっとだけ大きくて、簡単に付けられる上、マーチンの000-28Hの幅広ネックにもあっている。使わないときも、ヘッドにひょいと引っかけておけるんだ。
カポを使わないときはヘッドに止めておきたい、なんて思っている人にKyserは最適なのだ。実は私もちょっと気に入っているのである。