私の使っているメトロノームは二代目だ。セイコーのPicoシリーズ、色は黒。ぜんまいをまわし、錘でテンポを決めるタイプのアナクロなメトロノーム。しかし私は、このアナクロさが気に入っている。カッチカッチとクリック音がしっかりと鳴るアナログメトロノームは、その音が楽器の音に紛れてしまうことがなく、また振り子も目で見てテンポを感じ取りやすい。デジタルメトロノームが、振り子をエミュレートするところを見ても、この目で確認できるという要素の大きさがわかるのではないかと思う。
しかし、二代目のメトロノーム。ついに寿命が見えはじめてしまった。初代にも出たテンポの偏りが、いよいよ無視できなくなってきてしまったのだ。
いよいよなんて風にいうから、最近になって問題が出てきたみたいに聞こえるかも知れないが、実をいうともう何年も前からこの偏りは現れていて、適当に向きを変えたりしてやり過ごしてきた。ちょっとぐらいのズレなら、奇数拍でテンポを大きく捉えて偶数拍でのズレは気にしないようにするとか、適当にやり過ごしてきたりもしたのだが、段々とそうしたごまかしも難しくなってきた。それくらいにひどく現れるようになっている。
なんで偏りが出るようになったのだろう。部屋の傾きを疑ったりして、ビー玉を転がしてみたりしたのだがどうやら部屋に問題はなさそうだ。しかし困った。カッチカチと偏りをみせるテンポで練習するのはあまりよろしくない。仕方がないので、ピックを三四枚重ねて、左足の下にひいて偏りを是正したりしているのだが、これも万全とはいえない。そろそろ買い替えだろうか。迷っている。
迷いついでにもうひとつ。アナログメトロノームはもうやめて、電子メトロノームにする潮時なんじゃないだろうか。電池は使うが、そんなにすぐなくなるものでもない。アナログみたくぜんまい巻く必要もないから、練習はむしろスムーズにいくんじゃないか。電子音が気にくわないといっても、いずれ慣れるだろう。いや、けれどアナログのよさというのも捨てがたい。どうしたものか迷うなあ。
メトロノームを使い続けるかぎり、買い替えは必至である。どうしたものか、どうするか。ここで、サンプリングしたクリック音を鳴らしてくれる電子メトロノームなんてのがあったりしたら、きっとぐっと心が動かされるだろうになあ。