今日、久しぶりに弦を交換した。といってもたかだか3週間ぶりなのだが、最後の1週間はずいぶん長く感じたものだった。弦が弾力を失っているのが分かるのに、それでも強情に使い続けたのはどうしてか。それは、古い弦の音というのを、ちょっと知っておきたいと思ったからだ。
死にかけの弦の音が好きという人は少なからずいるようで、古い弦にはそれなりの魅力があるということなのだろう。それを知る目的で、ちょっと弦を長く使い続けてみた。
弦のコンディションは、だいたい10日目くらいに目立って悪くなって、多分そのころが替え時だった。けれど弦が切れるまで張り替えないでみようという気持ちが起こって、それからなんとか10日ほど持ちこたえたことになる。
じゃあ、古い弦の音というのはどんな感じだったか。端的にいうと、それほど悪くないという印象を持った。確かに細く音量に乏しいのだが、繊細ということもできる。だがやはり音の伸びが悪いので、強め強めに弾いてやる必要はあるようだ。
古い弦は確かにそれほど悪くないかも知れない。けれど、指弾きには絶対に向かないと断言しておきたい。というのも、弦が弾力を失って固く固くなるからだ。
弾力のなく音量もない弦をそれなりに鳴らすには、どうしても強めに弾いてやる必要がある。だが弦は固くなっている。それを強く指先ではじくのだから、指先にたこができてしまった。弦を替えて、まずいことになったと思ったのがこのたこのこと。弾弦のバランスが悪くなってしまっていたのだ。うまく指を弾き抜けないというか、引っ掛かりがあって不自然に感じるだとか、ともあれまずいことになった。悪い実験をしたものだとちょっと後悔している。
そんなわけで弦は早めに替えるべきというルールを提唱しておきたい。
古い弦を弾いていたことで、鳴らない弦を力で鳴らそうとする癖がついてしまった。演奏時、右の肘の先に軽い痛みが出るのだが、実はこれは腱鞘炎の症状で、不必要な力がアンバランスに入っているのが悪く働いた。さらに、スケールの練習中、特にアルアイレで弾いているとき、右手の平ががちがちになっていて、ちょっと長く弾くとこわばったみたいになってしまうのにも閉口した。
楽器は自然体で弾かないと、体にも良くないし、なによりよい音がしない。だから、弦は早く替えたほうがいい。