山路を登りながら、こう考えた。
先日私は手にあまり汗をかかない体質
であるといったが、はたしてそれは本当だろうか。この間テレビで汗に関する特集がされていて、私はそれを見て自分はだめな汗をかいていると反省したところなのだが、あるいはそれは違うのではないかと思ったのだ。子供の時分から、夏には冷房を入れず暑さを暑いままに受け入れてきた私は、ミネラルのほとんど含まれない、よい汗をかいているのではないかと、山路を登りながら、そう考えた。
私がミネラルを含まない汗をかいているとすれば、私の十年使ったサクソフォンがきれいにメッキを残していることも、そしてギターの弦が全然錆びないということも納得いく。私は手に汗をかかないのではなくて、楽器に影響の少ない、ほとんど水分からなる汗をかいているのかも知れない。
そう考えると、私は汗をかいてもそれほど汗臭さがするということもなく、だからこの思いつきはあながち間違っていないかも知れないと期待された。
なので実験。額に500円玉を貼り付けてみた。そうしたら、――くっつくねえ。何秒でもくっついてるねえ。
というわけで、私の思いつきは単なる思い過ごしである可能性が高くなった。確かに夏バテしやすい体質ではあるものなあ。
けれど、汗の質が楽器に与える影響というのは間違いなくあると思う。弦がすぐ錆びるとか、塗装がはがれやすいとか、そういうのが悩みになっている人は、体質改善を試みてみるのもいいかも。いや、本当にどうかはわからないんだけど。