ハードディスクレコーディングを試してみたいと思い、思わずハードディスクを壊してしまったというのはこの間のことなのに、それでも録音したいという思いは消えず胸の奥に反響しているのです。もし次に試すなら、このiBookにGarageBandでも入れて、そうするとオーディオインターフェイスが必要か。おんなじ録るならコンデンサマイクを試してみたいので、M-AUDIOのNovaが低廉な割に質がいいという話で、じゃあファンタム電源をサポートしてるオーディオインターフェースがいるから、EDIROL(Roland)のUA-25が手ごろでよさそう。けれど、こうした機器を揃えるのもいいのですが、もうひとつどうしても欲しいものがあります。録音用に、外付けのハードディスクが必要ではないですか?
別に外付けハードディスクがなくても問題なくGarageBandは使えるのですが、そうはいってもハードディスクレコーディング。起動ディスクを作業ディスクにするのは抵抗があります。
これは、ハードディスクを壊したからそういうんじゃないんです。基本的にハードディスクレコーディングやビデオオーサリングという作業は、ディスクリソースを異常に消費するものですから、私が怖れるのはハードディスク破損ではなくて、繰り返し作業によるディスクの断片化です。断片化を解消すればいいというものではありません。こういったものはそもそも起こさないことが大切で、私はこれまでそうしてきたのです。ディスクを酷使する作業は、それ専用のディスクを使ってというのが基本のキで、私がこないだディスクを壊したときも、この教えのために最悪の事態は免れているのですから。
そんなわけで、ぺらぺらストレージデバイスのカタログなんぞを見ていたら、なんと、驚いたことにRAID装置が個人でも手の届く価格になっているではありませんか! RAIDですよ、RAID。あの憧れてやまないRAID装置が、もうすぐそこにまで降りてきているのです。
RAIDというのは、複数のディスクをひとつのディスクみたいに運用する技術のことで、データの安全性を高め、データ転送の高速化を図ることが目的です。データの安全性を最重視するならRAID-1、これはミラーリングといって、ふたつのディスクに同じデータを書き込むことで、どちらかのディスクが破損してもデータは残るようにするやりかた。速度を求めるとRAID-0、これは複数のディスクにデータを分散して書き込み、読み出しすることで、一度に流れるデータ量を増さしめようとするもの。けどRAID-0は一台でもディスクが故障したら、全部のデータがパーになるという問題があります。
そして、憧れるのはRAID-5です。複数のディスクにデータを分散して書き込み、そして誤り訂正符号も書き込んでおくのです。データの転送速度を向上しつつ、ディスク破損があっても復旧が容易になるという、まさに夢の技術じゃありませんか。
私が始めてRAID装置を見たのは、まだ短大の二年生だった頃で、キャノンの01ショップをうろちょろしているときでした。カートリッジ式のハードディスクが、三つつながっているタイプのものだったと記憶しています。この特徴的なかたちの装置が、RAIDというデータの安全性を確保するためのものであると知るのは、MACLIFEの記事を読んでです。ああ、あの時はコンピュータのすべてが輝いて見えていました。
RAIDを知って以来、私の理想はRAIDになったのです。だって、コンピュータを使っていて一番怖いのは、データの消失です。データの消失するのは、もちろんコンピュータの盗難ということもありますが、それより一番考えられるのはディスクの損傷なのです。ディスクが壊れれば、中に入っているデータは少なからず失われます。もちろん全部救い出せることもあるでしょうが、そういうケースはまれで、過去に私は、Performa550のディスクの破損が原因で、メールのデータを一部失っているのです。
そうした経験から、もし大切なデータを扱うなら、あるいはもっと導入が手軽になるなら、いつかRAIDを手にしたい、RAIDこそが理想、夢だと思うようになって、いや、この考え全然変じゃないと思っていますよ。
I-O DATAやBUFFALOなんかがRAID装置をリリースしていまして、I-O DATAはRAID-1をサポート、対するBUFFALOはRAID-5ですよ。安いものでは十万を切っていますし、BUFFALOの1TB RAID-5にしても十万ちょっとですから、昔のことを思うと驚くほど安い。交換用のディスクも結構安価ですし、ああ、こりゃもう個人でRAID時代の到来ですよ。と、ちょっと興奮してしまった。いや、それくらいRAID装置というのは心を踊らせるものなのです。
けれど、やっぱりRAID装置は高価なので、私にはちょっと手が出ないんですね。こういう人のためにソフトウェアで実現するRAIDというものがあって、いや、もちろんハードディスクは台数分必要なんですよ。複数の普通のハードディスクを、ソフトウェアが取りまとめてRAIDにしてしまうというものです。Linuxとかでも普通にできますし(知識は必要らしいですが)、そしてMac OS XでもソフトウェアRAIDを使用できるんですね。
アプリケーションフォルダ内ユーティリティに、ディスクユーティリティというアプリケーションがあります。それでRAIDを実現できるのです。けれど使えるのはRAID-0とRAID-1みたいだから、ちょっと残念。それに私の使ってるのはiBookなんだから、内蔵ハードディスクは一台こっきり。外付けハードディスクを使ってRAIDを実現するのもなんだか使い回しが悪いから、この機能は拡張性に富むデスクトップ型でこそ生きるものでしょう。それに、起動ディスクをRAIDにすることはできません。なので、だから結局私には見果てぬ夢。ああ、けれどRAIDというのはなんと甘美な響きなんだろうかと思います。