思いがけず入間まで行ってしまった今大会予選。その勢いが、知人をも動かし二人で出場することになった。戦場は伏見、御狐様の眷族の見守る地。
前回に比べ比較的余裕もあった今予選だが、ブックの組み終わったのは結局前日の夜。それまでは試行錯誤ばかり。プレイさえ出来ない状況だった。しかし、知人からのメール、相談により、今までとは違う雰囲気を持ちながら、弱っていく意識を支え、前へと歩みを進めてきた。
ブックコンセプトは、前回ブックに当初のコンセプト、ダイス操作スペルを取り戻した感のある三代目。土地の確保も考慮に入れ、派手さはないもののオーソドックスな感じに仕上がっている。うまくいけば、そこそこ中堅どころの働きをしてくれるはずだ。
伏見予選は午後六時開会とのことで、戦略の見直しと模擬戦をかねて知人宅を訪ねる。知人のブックがコンセプトを絞られながらシェイプされてゆき、迷いは残るものの自分のブックについては変更をしなかった。模擬戦は三回行い、二勝一敗。ドリアードによる地属性確保とサンドマン、ミルメコレオによる土地防衛がうまくいけば、連鎖も含め、よいように回るのではないかと思わせる結果だった。
ただ不安要素としては、四人での戦いでは思うように土地がとれないということ、さらには、相変わらずリトルグレイが働かず三回連続で誘拐に失敗していること。おまけにチャームの魅了も失敗している。
対して知人のリトルグレイは、この三戦の間に五回の誘拐を成功させている。
つくづくカルドラの寵愛を受けずにいるのだった。
会場についてたまげたのは、トーナメントが四十組あったことだ。一体何人がエントリーしているのだろう。正直、その場で帰りたくなったくらいだ。くじを引き、知人と自分が違う組に入ったことで安心し開会を待った。
場所が伏見ということもあり、前々回京都予選で出会ったセプターとも幾人か再会できたのは嬉しいことだったといえよう。出来れば、再び同じ卓で戦いたいものである。
序盤は、まさに自分にとって有利な展開で始まった。手札にはいきなりパーミッションとリコール。周回で他者を抜き、土地もグレムリンを配置。後に地属性に地形変化したことにより、二枚のサンドマンもアクティブになった。順調に周回は進み、しかも単独で一位になるということもなかったため、まさに望ましい展開だった。そう、ここまでは。
しくじったのは、焦ってサンドマンのレベルを3に上げたことだった。この普段なら絶対にしない無理なレベル上げのために手持ち魔力が目減りし、敵のレベル3ハリケーンに踏み込んで火属性を占めていたルナティックヘアと地属性を占めたグレムリンを手放すことになってしまった。しかし、サンドマン二体は残っており、これを中心にレベルを上げていけばまだ大丈夫かと思われたのだが。
その土地のひとつに敵が踏み込んできたのは中盤。サンドマンにたいして彼が切ったカードはリトルグレイであった。しくじればいいと思うのだが誘拐が成功。サンドマンは東の周回、リリスに隣接する水属性土地に飛ばされてしまったのだった。
人のリトルグレイは働く。
そんなことを思いながら、もう一体のサンドマンを確保していることに安心をしていたのも束の間。次はそのサンドマンに踏み込んだセプターがあった。運が悪かったのはその土地がレベル3であったこと。敵の手札にテレイアがあったこと。そして召喚されたクリーチャーがグレムリンだったことだろう。
手札にはグレムリンアムルはあったが、本家のグレムリン相手にどれほどの役に立つというのだろう。土地は奪われてしまった。
この後は鳴かず飛ばずだった。手元に魔力を確保していたセプターからドレインマジックで奪ったのが最後だったか。水属性のサンドマンをミルメコレオに換え、ドリアードを召喚するもののなんの役に立とう。手札にはリトルグレイ。終了直前にレベル1ミルメコレオに止まり、厄を払おうと召喚するものの、通算八回目の誘拐失敗にへこみ、さらには二度目のレベル3ハリケーンに息の根が止められた三十ラウンド目だった。
最後に踏み込んだのがハリケーンではなく別のクリーチャーだったらチャームに賭けることも不可能ではなかった。だがチャームが効いたとて四位が三位になる程度のこと。結局は大きく奪われた魔力のためなけなしの土地を切り売り、最下位に転落して終えたのだった。
序盤から中盤にかけてはよかった、一位にさえ立ちもしたといっても負け犬の遠吠えに過ぎないだろう。カルドラの寵愛を受けられないとはいえ、失策があったことも否めない。それも、冷静に見ればそうはあり得ないような失策。
結局は自分という人間の戦略に負けた伏見だった。