前回のダイス目をコントロールするカードに対し、今回は使い方によってはホーリーワード以上に効力を発揮する、ダイスに働き掛けるもの以外の、移動に関するスペルカードについて考えたい。なお移動に関するスペルカードとは、
の二十種類。この中から今回はホーリーワードとスロウ、マジックダイス、ヘイスト、フライを除いての十種を扱う。
飛び地を移動しながら砦を通過することを余儀なくさせる「転送×転送!」では、いかなるところからでも速やかに帰城できるカード、リコールが有効なのは論を待たないだろう。移動関係スペル中では80Gともっとも高コストであるものの、それだけのコストに見合うだけの効果は充分にある。
なお、リコールは敵セプターを妨害するためにも、充分強力を発揮する。カルドセプトのルールでは、自分のターンに帰城しなければ周回ボーナスを得ることが出来ない。つまり、砦をまわり終え後は帰城するだけとなった敵セプターにリコールをかけ、強制的に城へと帰し、周回ボーナスの入手を阻むわけだ。これは、敵が魔力を使い果たそうとする周回終盤の城を目前としたタイミングで使って、もっとも効果を得ることのできる妨害策だが、ともすれば危険視された揚げ句、自分が同様の憂き目にあうかも知れないことを追記しておく。
これは、敵セプターが規定魔力達成を目前としている時のみに限定するなど、緊急回避手段として使用したほうがむしろ身のためかと思われる。
とまれ、自分の周回を稼ぎ、かつ敵の周回を阻みうる絶大な力を持つリコールを入れない理由はないだろう。
自分のいるマスに全セプターを呼び集めるアポーツは、使い方次第でかなり凶悪なカードとなりうる。というのは、城の真上でアポーツを使うことによって敵セプター全員にリコールをかけるのと同様の効果をもたらすためだ。アポーツ使用後はダイスを振れないので、必然的に自分は城に止まることとなり、領地コマンドの使用が可能となる。
一般的なアポーツによる嫌がらせは上記のものだが、「転送×転送!」では別の嫌がらせが可能となる。それは、砦が一つしかない東西の周回どちらかに踏み込み、次ターンでアポーツを使用。自分はもとのルートに帰還しながら敵セプターを不利な位置に追いやることができる。
しかし、あえて自分の移動を支えるカードを減らしてまで、アポーツという嫌がらせカードを入れる必要があるかどうかは疑問である。敵セプターも自分同様移動関係スペルを多く入れてくるのは自明である以上、アポーツによる嫌がらせも決定打にはなりにくいだろう。
アポーツは店bでも売っているため、手札を圧迫してまで持つ必要はないと思われる。余裕があればショップで購入し使う程度でいいのではないだろうか。
もっとも近い特殊地形へ飛ぶことができるテレポートは、このマップにおいては利用価値が高いように思える。しかし、意外と使えないのがこのテレポートだ。
このマップにおいて、テレポートに期待するのは近くの転送円へと飛ぶことだろう。だがこれが使えない。というのも、城のある南の周回で使っても、転送先は東西どちらかの周回。東西の周回では、逆の方角の周回か北の周回に行くだけに過ぎない。しかも、特殊地形が非常に密集しているこのマップでは、転送円にではなく砦やショップに止まる可能性も非常に高いのだ。
とのことから、テレポートを使い自分の望む先へ飛ぶことは、かなり困難である。むしろ、テレポートに頼るよりも、ダイス目をコントロールするカードを使用するほうがずっと効果的である。
「転送×転送!」において、ジャンプとリープ四種は使えるようでいてまったく使う意味のないカードである。というのは、これらは歩いていける対象土地にしか飛べないため、飛び地の多いこのマップではほとんどその能力を活かすことが出来ないためだ。
開始時点でリープのうちのなにかを使ったとしよう。南の周回には城と転送円、無属性土地しかないため、単純に考えればほかの周回の対象土地に飛ぶと思うところだが、歩いていける土地しか対象にならないというルールがあるため、どこにも跳ぶことが出来ず一手損をする結果となる。
これはジャンプにおいても同様であり、自分のいまいる周回に自分の土地がない場合、対象土地がないとして効力を発揮せずに終わる。
どうしても特定の土地を取りたい場合ならともかく、むしろ周回を重ねボーナスを得ることが重要なこのマップでは、リープは使いどころのないカードといえる。リープを使って望む属性の土地を取るのなら、ホーリーワード等で城まわりの無属性土地でも押さえ、地形変化させたほうがより効率的だ。
ジャンプに関しては、どうしてもピンポイントで自分の土地に止まりたいというシチュエーションでないかぎり、リープと同様使いどころに苦しむだろう。手持ち魔力を自分の土地に投資すれば規定魔力に達するといったときには、ジャンプがあると便利だ。しかし、そういったシチュエーションがそうそう起こるわけでもないので、入れても一二枚、むしろ入れずに済ませても問題ない。
移動先がランダムに決められるD・ドア。これは実に危険なので、絶対にお勧めしない。というのは、侵略の用意が整っていない状態で敵高額土地に移動してしまうと、目も当てられない結果に終わるためだ。実際、「転送×転送!」で模擬戦をしているとき、D・ドアで僕のレベル5土地に踏み込んできた知人が、見事破産した。
このような大自爆の例を目の当たりにしているため、D・ドア使用に関しては消極的である。
だが予測できないランダム性から生じる面白さを自他問わず振りまきたいという人は、D・ドア導入に踏み切るのもいいだろう。自分に使って思わぬ危機を招き、他人に使って思わずアシストをしてしまう。こういうのもカルドセプトの楽しみの一つだ。
バックワードはまったく使いどころがないわけでもない。砦や城を目前とした敵セプターにバックワードをかけ後退させ、あわよくば転送円に踏み込ませよそへと追いやってしまう。だが、自分の一手を使ってまでメリットのある嫌がらせとは思えない。何度もいうが、相手も移動関係カードを充実させている可能性がある以上、バックワードに素直にはまってくれるとはなかなか考えにくい。
バックワードを入れるくらいなら、他のカードを充実させるべきだろう。
「転送×転送!」では、移動に関するカードは、いくつかを除いて思いのほか使えない。中でももっとも役立つのはリコールであり、次点として敵セプター妨害用としてのアポーツ。残りは使いどころに悩むものばかりとなった。
リコールは別格として、他のカードは不要と判断して問題ないだろう。どうしても入れたいのならアポーツくらい。テレポート、ジャンプ、D・ドアは、かなり特殊な需要がない以上、入れる意図が見つからない。