五月五日、子供のある家族はこどもの日を祝う。いやむしろ今では、この日は男の子のための祝いである。女の子のお祝い、ひな祭りは三月三日に催される。このふたつのお祝いは、歴史上すべての子供のためのものであった。しかし五月のお祝いは男の子のものに、三月は女の子のものに変わってしまった。だが五月のお祝いは、祭日としてはこどもの日と呼ばれている。
子供の成長を願う親たちは、こいのぼりと呼ばれる鯉のかたちの吹き流しを揚げる。だがこの数年来、私はこいのぼりを見ていない。子供時分には毎年、父が私のためにこいのぼりをあげてくれた。風になびく大きな鯉を見て、私はいつも嬉しかった。旗竿には常に鯉が三尾、黒と赤と小さな青。中国の伝説に云う、瀧を登って鯉は神聖な動物である龍になる。親たちは自分の子供が、神の龍のような立派な大人になって欲しいと願っている。
親たちの願いは、世界中で、いつの時代であってもきっと変わらない。ところで、私は親に詫びねばならない。というのも、とっくに大人になった私は立派でないばかりか、怠け者でさえある。けれど私も、私もなかなかしっかりした人になりたいとは思っていたのだ。
(初出:Les douze mois au Japon, mais selon moi,オリジナル:フランス語)