友人が「直リン」という言葉をどのような読みで読んでいますかと聞いていたものだから、私個人の見解を示したところ、ネタですよね? だなんていわれて、失礼しちゃうわ。なので、なぜ私がそうした読みをするようになったかという文章を書いたのでした。それがあんまりに面白かったもんだから転載します。
直リンの読み方について、とある掲示板上で論が争われたことがかつてあったのです。「ちょくりん」派、「じかりん」派がその持てる知識、論理、恫喝、あらゆる手段をもって争い、ついに決裂するかと思われたその時に、あたかも神の手によってあらかじめ用意されていたかのごときタイミングであらわれた「なおりん」。仇敵のごとくに争っていた両派は「なおりん」を目にした瞬間、争いあうことの愚かさを悟り、そうだこれからは「なおりん」と呼ぶぜと誓うことで、それを和解の諒解としたのです。
「なおりん」とは、この争いの絶えない悲しき世界にもたらされた、平和への祈りの別称。そう、だから私はその故事にならって、直リンを「なおりん」と呼ぼうというのです。
# ちょっと誇張してはいますが実話です。
それで、もう一件。ここからはちょっと暗い話になるかも知れないから、引き返すなら今のうちだ!
私はここ最近MMO型RPGに参加しているわけですが、長くこうしたゲームに手を出さなかった私が重い腰を上げたのには理由があって、そのひとつが『ナツノクモ』という漫画です。
『ナツノクモ』は、かつて作者篠房六郎が『空談師』という漫画で描いてきたMMO型RPGの世界をそのまま引き継いでいて(『空談師』には二種類あって、デビュー作となった読み切りは白眉です)、私はこの人のファンだから綿々と追ってきていたのですが、しかし『ナツノクモ』はすごくて、重いテーマを扱ってなおざりにせず、素晴らしいなと思っています。
さて、あんまり漫画の筋をここで書くのもなんなので書きませんが、私がこの漫画に引かれるのは理由があって、主人公であるコイルの抱えている問題感情がまさしく私のそれそのもので、自分は正直役に立たない人間だと思っている。くだらない、なんの価値もない人間だと思っていて、このへんをうまく言い表すには同じくこの漫画の登場人物であるクランクの言葉を借りたほうがはやい:
貴方は結局はナルシストなんですよ。
自分は土くれのようなもので、誰かに与える事も愛される事もないものだと思い込んでいる。
そうして心地よく絶望の中に浸って何も動かないままでいるのが貴方の希望なのだとしたら、前の失敗から何一つ学んでなかったということになる。
つまりこの文章で私がなにをいいたいかといえば、とにかく面白い漫画なので、皆さんが興味を持っていただけるとこのうえなく仕合せかなって!
とにかく漫画が売れてくれないと困るわけです。長く長く引き伸ばされても困りますが、掲載誌が『IKKI』だから、そういう無様はないでしょう。だから、とにかく売れて、売れて、売れて欲しいのです。打ち切られたり中途半端な終わり方をしたりしたら、私、立ち直れないかも知れません。
とまあ、今月の『ナツノクモ』があんまりに面白かったもんだから。ええ、あんまりに面白かったものですから。
(初出:2006年4月24日)