日仏学館の授業は、一期あたり十回開講されることになっています。ということは、今回が春季における最終回。寂しくも悲しい、終わりのシーズンなのであります。
だというのに、最終回だというのに、ちょっと所用があって授業に出られない―― かなしー、けれど用事は日仏学館の近場で、三時半には終わるものだったので、最後の一時間だけは参加することができました。うー、ぎりぎり皆勤賞かー。有遅刻無欠席ってやつですね。
着いたときには、びっくりしました。授業は、なんとふたりだけでおこなわれていたらしい。つまり、僕が三人目の学生というわけ。今日の授業内容は最終の追い込み、練習問題の連続です。それはそれは大変だったらしく、ふたりともへろへろに疲れ果てていました。だ、大丈夫なのか? 僕が参加しても状況はあまり変わらず、どんと出される問題をどんどん答えていかなければならない。いやあ、これをたったふたりでやっていたわけですから、そりゃ疲れたことでしょう。
ですが、よく考えたら、これはものすごく贅沢なことですよ。三十時間三万九千円の講座です。時間あたり千三百円で、ネイティブフランス人講師による少人数レッスン。すごくお得な状況になっています。
でも、参加者が少ないというのも考えもので、この講座はその存続を危ぶまれています。だって、三人四人五人くらいでは、採算が取れないんですもの…… じゃあ、来期は一体どうなるんだろう……
フランス語で書くことで、単語や用例を覚えていこうという試み。前回は詩についてでしたが、今回は再び作文に戻りましょう。
フランス語で書くということは、ただ単に和仏辞典を引いて日本語をフランス語に置き換えればいいというわけではありません。フランス語にはフランス語らしい書き方があり、できればそれを踏襲していきたいものではありませんか。当然のことながら、頑張ってフランス語らしく書こうとしても、結局は日本人が日本語で考えたものにほかなりません。きっとフランス語そのものとはならないでしょうが、それもまたよしでしょう。
フランス語作文においては、三部構成がとりわけ重視されています。三部構成とは、導入、本文、結尾により形成される作文の形式です。音楽で考えれば、ソナタ形式のようなものと見ることができるでしょう。ソナタ形式は、提示部、展開部、再現部の三つの部分で構成されます。提示部でふたつの主題が提示され、それら主題は展開部において展開されることになります。そして、再現部でそのさんざ展開された主題が再びもとのかたちで表現される。ですが、再現部は、提示部とまったく同じではない。これが実に巧妙です。
フランス語の作文も、ソナタ形式のようなものと思いましょう。
第一部で、主題が示されることになります。主題の周辺から、徐々に主題の核心へと話題はしぼられていき、そして展開への橋渡しがおこなわれる。これが導入部の役割です。見れば、ここにも小さな三部分がありますね。導入の導入――ここではまだ主題はしぼられていません、の後に、主題の提示される部分がきます。そして最後に展開部へのブリッジが用意される。
この三部分で導入部は構成されます。もちろん、文章の大きさによって、規模は縮小されることもありますよ。
導入部が済めば、一番大切な本文がやってきます。ここでは、導入部で提示された主題を論証、展開することになります。
最もわかりやすいのは、賛成意見と反対意見を取り上げるといったように、ひとつの問題を多方面から論証するやり方です。事象Aに対する評価として良い面を呈し、次いで悪い部分を呈します。あるいは、事象Aを構成する要素を取りだして、要素A、要素B、要素Cというように、それぞれを明らかにしていくのもひとつの手でしょう。
ここでまた厄介なのが、この本文もまた三部分で構成される(ことが望ましい)ということです。そのため本文部分では、第一に……、第二に……、最後に……、という言い回しがよく見られることになります。逆にいえば、この言い回しを見つけることができれば、論旨もつかみやすいということです。
でも、なんでこんなに三部分が好きなん? そう問われれば、キリスト教が関わってるからかも…… としか言い様がないのですが、本当のところはよく分かりません。
結尾部は、これまでのものとは異なり二部構成になります。本文においての論証、展開がまとめられる部分と、それらに対する評価つまり結論がきます。
文章において最も重要なのは、この結尾の部分であるといえましょう。最後の最後に、だから私はこう結論する。これがこないことには、とても終われるものではありません。ですが、この結論をすっきりと片づけるためには、論証がきっちりおこなわれていなければなりません。よい論証がおこなわれてこそ、よい結論がくるのです。
以上、フランス語の三部分形式というものを、簡単に説明いたしました。重要なのは本文及び結論ですが、本文に入る前にはやっぱりよい枕がないといけませんね。
この作文のやり方は、フランス語においてのみではなく、日本語での作文にも生かせるものです。ぜひ、フランス語での作文を頑張って、フランス語とそのものの考え方をものにしてください。
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