この講義は、音楽について勉強したいとは思うのだけれどどこから手を付けたらいいか分からないと迷っている、そのような音楽の初学者を対象にしています。出来るかぎり平易な表現で、けれど決して手を抜いたりいいかげんではないもの、可能なかぎり体系的な音楽に関する知識と理解を得られるようなものにしたいと考えています。
音楽に関する知識や理解とひとことにいっても、音楽に関わる学問の分野は幅広く、多くの細分化された分野に分けられています。それは史的なものであったり理論であったり、はたまた社会学や美学であったりと、その扱う内容や手段もさまざまです。
ですがこの講座では、ひとつの分野、領域にとらわれることなく、総合的な音楽理解を得ることの出来る機会を提供できるよう心がけます。また筆者自身、読者とともに音楽に対する知識、理解を深めることが出来ればよいと、思うところです。
まずはじめに、音楽を理解するために必要と思われる基本的な約束ごとを取り上げる予定です。楽譜の読み方や記譜のルール、音楽に関する用語など。音楽について書かれた本を読むために求められるだろうくらいの知識、用語などの説明が主となります。ですが、ただただ詰め込むような表面的な知識ではなく、ルールや取り決めごとの底にある考え方や理由もあわせて知ることの出来るよう心がけたいと思います。
基本的な音楽に関する語句、用語、取り決めごとを説明した後は、音楽史を中心にした叙述を進めていきます。その際には、音楽だけに限った歴史をではなく、広くその時代の世相、社会の動向や精神も反映させ、可能なかぎり例や参考資料を提示したいと考えています。また、その時代を理解するために必要と思われる知識や理論等をトピックとして取り上げ、史的なジャンルだけにとらわれない知識を、実例や時代背景もともなって、紹介します。
この講座で扱われる音楽は、西洋音楽、とくに広い意味でのクラシックと呼ばれるものが中心です。時代としては、中世から近現代に至るまでが主な対象です。余裕ができれば、西洋以外のものやクラシック以外の音楽も取り上げたいと考えています。