なあ、ベルトはどうする?

 ギターを弾くとき、ベルトが気になる。ならない人もそりゃいるだろうが、実は気にしているという人はきっと多いはずだ。もっと具体的にいうなら、ベルトのバックルの問題。ベルトのバックルがギターの裏に当たって、大きな傷を付けてしまう。これって嫌だなあと思う。思わないか? 私は思うぞ。

バックル傷に抵抗する

 『弾けるフェンダー・ムスタング』という本に収録されているCharのインタビューを見ると、立って弾いてないやつとか、バックルより上で弾いてるやつとか、裏のキズで分かるでしょ? とくる。普通にセカンドハンドの楽器にはバックル傷があると考えたほうがいいのか。どうなのだろう。

 一概にはいえないことだと思うが、一般に日本人は楽器を丁寧に扱うらしい。傷ひとつつけないよう宝物に触るみたいにしているのが、外国人から見れば驚きだとの話だ。特にこれは中古に関してもそうで、日本の楽器屋にはとにかくぴかぴかの楽器が並んでいる。こんな国民性だから、バックル傷についても神経質なのだろう。オークションだとか中古楽器を扱う店での説明を見れば分かるが、バックル傷に関する記述は多い。バックル傷あるいはバックル痕で検索すると、実例を見ることができるだろう。

 しかしバックル傷ありという楽器でも、写真を見る限りほとんど分からない場合があって、これなんかは神経質な買い手に先手を打つ意味が多いのではないかと思う。実際私は見事なバックル傷を持つ楽器を見たことがあるし、まあこれは普通にギターを弾いて、いろいろ見たり聞いたりしようとしている人なら、自然に出会うようなもんだと思う。すごいと思うか、ひどいと思うか、それは人それぞれだろう。ちなみに私はすごい、いっぱい弾き込んでるだねえと感心する。その割に自分のギターには傷のひとつもつけるもんかと思っているのだから、考え方としてはまちまちだ。

私の対処法

 偉大なフォークシンガー、なぎら健壱氏の解法はシンプルで完璧だ。彼のギターのバックには、バックル傷対策のゴルペ板が張られているらしい。氏のギターはアストリアス製で、サイトの使用者の声ページには書かれていないが、カタログにはちゃんとその旨記載がある。加えていえばこの人はどんなものでも残しておきたい質らしくて、そのことを知ってもっと好きになった。

 さて、私の対処法はというと、エルヴィスのやり方をまねたのだった。エルヴィスというのはプレスリーのことだ。話は十年以上前にまでさかのぼるぞ。

 教員の免許を取るため実習に行った時の話なのだが、英語の実習生がエルヴィス・プレスリーを題材に取り上げるということで、写真集だとかいろいろ資料を持ってきているのを見せてもらったのだった。いうまでもなくエルヴィスはギターも弾いていたのだが、この人は意外にそういう道具を大事にするタイプの人のようで、ギターの裏に傷がつくことをいやがって、バックルが左脇にくるようにくるりと回していたのだという記載があった。

 それを見て、私はこの手があったかと思った。当時私はまだギターには手を出していなかったのだが、そのかわりにサックスを吹いていた。サックスは首から下げるようになっていて、ベルトのバックルで傷つけやすい位置に楽器がくるんだ。私は神経質なもんだから結構気にしていて、だがエルヴィスのやり方なら傷つく心配はない。こうしてひとつ、私は心の煩いを取り除くことができたのだな。ありがとうエルヴィス、ありがとうキング。そしてこのやり方は、今もなおギターを弾くときに役立っている。

 といいたいんだが、実は今では違うやり方で対処している。それは、そもそもベルトをしないというものだ。もう半年くらいベルトをしていないもんだから、身辺からベルトが消えてなくなってしまって、いざというときに困る。だがギターに傷がつかないほうがずっと大事だから、ベルトなしのちょっと間の抜けたスタイルをこれからも続けていくつもりだ。

 しかし、夏やせしてしまって胴回りが細くなったもんだから、歩いているとズボンが危うい。まあ骨盤があるから、最悪の事態は免れると思ってはいるんだが。


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公開日:2004.08.12
最終更新日:2004.08.12
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