定期的に爪にやすりをかけないと、伸びてしまって具合がよくない。一週間に二度くらいのペースで調えるのがよさそうなのだが、無精者の私はもっぱら一週間に一度、下手すれば二週に一度にしてしまう。爪が伸びてきて弦への引っ掛かりが気になりすぎるくらいに気になって、削りはじめる。けれど、今回は早め早めの心掛けで、伸び切らないうちにやすりをかけたのだった。
けど、やすりがけって面倒くさいので、なにか別のことをしながらちまちま削ることが多い。そもそもそれが間違ってるのだが、まあ私は横着者なのだ。ネットで情報収集がてら削っていたら、人差し指の爪先がちょっと斜めになっていて、別段気にする必要もないと思っていたが、弾きはじめるとなんだか引っ掛かりがある。爪の角もちゃんと取ったつもりなのに、足らなかったようだ。もう一度念入りに面取しようとやすりを持ったら、思わず斜めになってるのも直したくなってしまった。
と、それが失敗の元。ばっちり真横一文字に爪先は揃ったのだけど、指頭よりも爪先が下がってしまって、弦に爪がかからなくなってしまった。うわあ、やり過ぎてしまった、削りすぎだ。
指頭での弾弦は久しぶりなので、実に具合が悪かった。爪があれば弦に引っ掛かるのが、指頭は丸くなめらかなのでかからず滑ってしまい音が鳴らない。今までは爪先だけ引っかけて弾いてたことがよく分かる。でもこれっていいのだろうか?
ギターの教本なんか見ると、爪は音に艶を与えるのが目的で、音のおおもとは指弾によるものだ、みたいに書いてあって、それを正直に受け取ると、指先が引っ掛からない、爪だけ引っかけて弾いてるというのはあまりいい弾き方ではないのだろう。
最初こそ全然引っ掛かりがなく弾くに弾けなかった人差し指も、だんだんコツが飲み込めてきたのかなんとか鳴るようになってきて、けれどさすがに爪の突いてる指の方が音の輪郭がはっきりしている、芯があるように聞こえる。いっそ他の指も爪を全部削ってしまおうかと思った。そうすれば全指平等だし、指頭で弾くコツも全指に行き渡るだろう。けど、あえてそうするのはやめようと思った。削ってしまうと、ほら、すぐには戻らないから。削って失敗したと思うようなことがあったら、さすがに面倒だ。中指薬指の爪は削らずにおいた。
爪のない指で爪のある指に対抗しようと頑張っているうちに、だんだん音がしっかりしてきた。それにともない、指先がじんわり痛くなってきた。そりゃそうだ、今までほとんどかすってるだけだった指で、しっかり弦をつかもうとしてるんだもの。それだけのストレスに指先がさらされてるわけだ。
人差し指の変化にともない、中指薬指も少しずつ感化されている(いや、自然にそうなってきたのではなく、意識的にしているのだが)。指頭で弦をとらえるようになってはきている、しかし人差し指にかかっているほどのストレスはない。やはり爪に頼っているのだろう。
今の時点では、指頭と爪先のどちらがよいかは分からない。指頭で充分弾けるようになってから爪を伸ばすほうがいいのか、それも分からない。しかし親指の、指頭で、爪で弾くそれぞれの音の違いを聞くと、少し方向性が見えてきそうな気がする、するもんだから、とりあえず今は、人差し指だけでもしっかり指頭で弦をつかめるように心掛けておこう。きっと損はないはず。
指頭で弾弦その後 >