チューナー壊れる

 私の愛用のチューナーは、セイコー製のST1000というもので、型は古いが頼れるやつだ。機能は基準音の発振と針式のチューニングメーターと基本的なものに留まるが、内蔵マイクだけでなくモノラル標準ジャックのINPUT/OUTPUTに対応しているから、エレキギターのチューニングにも便利。9V ACアダプタに対応するなど、質実剛健に使うには実に適したチューナーだったのだ。

 だが、そのチューナーが突然沈黙した。突然電源がOFFになり、うんともすんともいわなくなる。中で断線したかと思い裏ぶたを開けてみればシンプルな基盤が現れ、断線したような感じはなかった。裏ぶたを閉じてみれば、なぜか電源が入るようになり、しかし今度は針が振れなくなってしまった。

 極めて謎の挙動を示した我が愛機。しかし電源が入っても針が動かないでは不便なので、仕方がないと、思い切って新しいチューナーを買うことにしたのだった。

チューナーに求める条件

 私は今はギターを弾いているので、ギターチューナーがあればいいのかもしれないが、私はあの便利で手軽なギターチューナーというのが嫌いなのだ。最近のギターチューナーはオープンチューニングに対応するなど、実に多彩に使うことができる。しかし、オタルナイチューニングみたいな独自チューニングを試したい場合にはどうしたらいいのか。それに、各フレットの音程をチェックしたり、音階各音の音程を確かめたりするには、ギターチューナーは向かないだろう。だから私には、普通のクロマチックチューナーが必要だ。ギター以外の楽器をすることもあるだろうから、ギターチューナーでは不足なのだ。

 私のチューナーに求める条件というのをちょいと箇条書きしてみよう。

  1. 精度の高さ
  2. 視認性の高さ
  3. 基準音の出力
  4. クロマチック対応
  5. マイク精度

精度の高さ

 最初にあげた精度の高さは、いうまでもなく当たり前のことだから、くどくど説明しない。それに最近のチューナーなら、よほどのものを選ばない限り、ちゃんとしたものだろうから心配することもない。

視認性の高さ

 ごちゃごちゃと細かい表示を読んだりする必要がなく、LEDや針によって、一目瞭然という感じで音程のずれ、現在の音名を把握できるようになっているかということは意外に重要で、特にチューナーのように長く付き合うような機械とあれば、そうしたわかりやすさというのはなににもまして重視されるべきことであろう。

 特に、私は針で音程のずれがわかるものが欲しいと思った。というのも、セイコーのST1000がまさにそうした針によって指示するタイプのチューナーであり、視覚的に音程の上下、微妙なずれを把握できるというのは大切であるからだ。

 音程のずれをきちんと把握できるとなにがいいのか。

 音程のずれを認識できるできないの差は、純正の響きを得ようというときに顕著である。私たちが普段頼りにしているキーボードやチューナーの発振する音は平均律に基づいたものであるが、実はこの平均律というものは、和声的な観点から見れば決して理想的なものではないとご存じだろうか。そうなのである。平均律はそもそも鍵盤楽器での移調や転調を便利にするために考案された比較的新しい調律法であり、合理性の追求の前に自然をないがしろにするという、極めて人工的なものなのである。しかし音響というのは自然のものであり、平均律の枠には収まらない。鍵盤上に純正の響きを得ることはできないのである。

 なので、純正な響きを得ようと思えば、ちゃんとそれぞれ適切に音の高低を微調整してやらなければならない。そのためには、針などの指標をもって、平均律的な基準からのずれを把握してやらなければならないのだ。

 純正律的なアプローチは、ヴァイオリン族などの弦楽器では当然のようにとられているし、私が昔やっていた管楽器でも同様。なら、ギターでもこうしたアプローチを試みてみるべきだろう。実際、クラシックの人間は意識的にこれをやっている。

基準音の出力

 基準音はやはり必要だろう。基準となるA音を発振し、それを耳で聞いてあわせる。この点、チューナーは音叉の代わりであるともいえるかもしれない。

 耳で聞いてあわせるというのは、意外に必要なことで、頭の中に明確な音のイメージがないままに行うチューニングは、実はチューニングとはいえない代物であるからだ。

 チューナーの示すとおりに各弦をきっちりとあわせて、ギターのチューニングが完了したと思ってはいけない。というのも、あくまでもチューナーというのは目安であり、楽器の中で各弦の関係が良好なものになっていないようでは、なんの意味もない。といっても、普通にチューニングするならチューナー任せでもなんとかなるから、そんな大げさなものでもないんだけど。

 ところで、チューナーの発する電子音というやつは、どうも音程をとりにくいと思うのは私だけではないはずだ。友人の三味線奏者がいうには、メーカーによってとりやすさが違うとのこと。だから、音の好みなんかを確かめてみるのもいいのかもしれない。

クロマチック対応

 クロマチックに対応していれば、音階をバランスよく弾く訓練をするときにも便利に使うことができる。そもそも私が管楽器出だからいうのだが、管楽器というのは楽器の構造上、正しい音程が出ないようになっている。Aをきっちりあわせたからといって、じゃあ他の音が正しいかといえば、そうではないのである。

 だから、すべての音をチューナーで確かめて、音程のずれる傾向をつかんでおく必要があった。

 対してギターは、フレットのある弦楽器だから、管楽器のようなことはないだろう。しかし現実にフレット音痴の楽器は存在し、また楽器のコンディションや奏者の癖によっても音程の甘さは出てきてしまう。楽器任せでは駄目だという点では、ギターも管楽器に同様といっていいだろう。

 だからクロマチック対応。全音程をチェックするくらいの意気込みで臨みたい。

マイク精度

 そして、最後にマイクの精度。内蔵のマイクの精度が悪いと、うまく音を拾ってくれず、変にストレスがたまったりすることも。なので、マイクの精度が高いにこしたことはない。とはいってもさ、この辺はカタログスペックじゃわからんから、どうしようもないような気がする。それに、どれでもさして変わるものではないだろうし。

次回予告

 と、そんなわけで、急遽チューナーを調達する必要が出てきてしまった。けれど、私は今巷でどんなチューナーが使われているかをしらない。だから、ざっと調べてみようと思う。


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公開日:2005.04.21
最終更新日:2005.04.22
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