なぜZOLELEを購入するに至ったか

ウクレレ購入前夜

 ギターを買って四ヶ月。本来私はウクレレに手を出すつもりはなくギター一筋と誓ったはずだったんだが、早くもウクレレを買ってしまった。なんでだろう。愛やあの日の誓いは永続しないというのだろうか。いや、そうではないのだ。ウクレレの購入は実にギターのためだったのだよ、最初はね。

 ギターを買ってからはもう病みつきでしたよ。毎日少しでも時間を作っては弾く。もちろん弾けない日もあったけれど、可能なかぎり弾いた。そもそもが毎日同じことをするというのに苦のない性格だもんだから、ギターを弾くのが日課となれば後はもう無問題。風呂に入るとパブロフの犬状態でギター演奏モードになってしまう。今やギターは生活の一部となっているわけだ。

 私のギターはいわゆるアコースティックギターと呼ばれる類いのもので、フォークギターと言ったほうが話が早いか、アンプやスピーカを必要としない昔ながらのギターである。あえてピックアップのついていないものを選んだのは、下手をするとアンプ、エフェクター、スピーカなどに凝ってしまいかねない自分の性格を嫌になるほど知ってしまっているから。できるだけ考えないで、楽器そのものと対話したいと思ったわけさ。アナログ志向、アンプラグド志向の私はつまりは地球に優しいのだ。

 しかしアコギには問題がひとつあった。それは弦。全弦がスチール製だものだから、押弦する左手指が痛くて痛くて仕方がない。四ヶ月弾いて結構指先も硬くなってきているというのにまだ慣れない。知人の三味線弾きにアドバイスを求めたら、耐えろ我慢しろの一言で終わった。いやはや伝統音楽の人間は強い。見習わないといかん。

 と言うわけで指の痛みに耐え練習を続けるのだけれども、いくらなんでも人間我慢にも限界がある。大体練習二時間を超えるころから痛みが辛くなってきて、三時間くらいすると押さえられなくなる。さすがにこれ以上は演奏できないと練習終了。でもまだ弾きたい。その満足できない思いをなんとかしたいと思ったわけだ。

セカンド楽器探求

 もっと長く演奏を続けるためには、弦の軟らかい楽器をセカンドとして置いておけばいい。この時点では選択は二種類だった。つまりナイロン弦を張るクラシックギターと弦の張力がアコギよりも弱いエレキギターのふたつ。アコースティックギターを満足に弾けない状態でクラシックギターに手を出すのは危険すぎるということで、普通に考えればエレキギターを買うことになりそうだったのだが、なにを考えたか、持ち運びしやすい小さなアコギ、しかもチューニングが四度高いミニギターなんかじゃなくって、通常の調弦ができるのが欲しかった。けどそんなのあるのか。それがあるのですよ。

 ビデオテープを買いに行った三番街でたまたま寄った梅田ナカイ楽器で見つけたのが、ヤイリレディーバードというギター。ボディこそ小さいけれど弦長はしっかりと確保されていて、チューニングは普通のサイズのギターとかわらない。音色は今使っているドレッドノートの深い響きとは違い、軽くよく通るものというのもよかった。うむ、僕はレディバードを欲しいでござるぞ。でもちょっと待て。指が痛いためのセカンド楽器じゃなかったのか? とふと見上げるとそこにはフェルナンデス社のご存じZO-3ギターがあったのでありました。

 そうだZO-3だ! ZO-3はギターを始めようという時にアコースティックにするかエレキにするかの選択以前に、候補に上がっていたのだった。ZO-3というのはギターにアンプもスピーカもついているので色々を買い足す必要がないというメリットがあって、そのためエレキを買うならZO-3と思っていたのだった。ところがこのZO-3、いろんなモデルがあって悩むんだよね。ノーマルのスピーカで鳴らすだけのものを始めとして、ディストーションのON/OFFスイッチとトレモロアームのついた芸達者モデル、そしてエフェクター内蔵のDIGI-ZO。加えてベースのPIE-ZOなんてのまであって、特にこのPIE-ZOには目がくらんだ。欲しくなった。と言うか今でも欲しい。いつか買おうと思っている(買うならフレットレスやね)。

 とまあZO-3は衝動買いをするには少々高くて、しかもモデルが多すぎた。すぐには選べないのが私だ。DIGI-ZOにトレモロアームがあったら迷わずDIGI-ZOだが、性能では劣るが安く外出楽々の芸達者に引かれるところもある。でもそんなにZO-3ばっかり買っても仕方ない。なので、ネットで調べはじめたのだった。ついでにネット最安値も調べときたかった。

ZOLELEとの出会い

 ZO-3サイトを調べていると、ZO-3専門サイトをふたつほど発見。ZO-3 databaseZO-3 Maniacs!。前者には歴代ZO-3のリストがあって、それを見ているとどうやらエレギ、ベースのZO-3以外にもいろいろ変わり象がいるようじゃないですか。テルミン付きZO-3、アコギ風ZO-3、七弦仕様というのもあった。けれど目が留まったのはそれらギターZO-3ではなくて、なんとウクレレだった。

 ZOLELE! 名前の付け方もふるっている。比較的安価で形が象というのが素晴らしい。調べてみれば完全アコースティック仕様(というか普通のウクレレ)で、どうやら限定生産品の模様。リリースされたのは2001年の7月だったらしく、欲しいなら店頭在庫を探せということらしい。けどまだ売ってるんだろうか? とZO-3ファンの人に聞いてみると、昨年末くらいに近所の楽器店にはあったという情報を入手。けどイシバシ楽器町田店というのはきびしいなあ。東京やんか。関西にはないんやろうか。仕方ないから楽器店にがんがん問い合わせをしたのだった。

 在庫確認返事待ちの間にZOLELEの正式名称が判明。最初思い込んでいたZo-leleではなく、ハイフン無しのZOLELEが正解。この結果でもってさらに検索を進めると、どうやらイシバシ楽器神戸三宮店にZOLELEがあるみたいじゃないですか! イシバシ楽器万歳です。でもこういうWeb上の情報というのは信用できないところがあって、実はもう売れているんだけど更新するのを忘れてましたなんてのがあって困る。IT時代だなんだいっても、結局足で確認するしかないのだな。

 足で確認する前に、気になる情報もゲットしてしまった。それはウクレレ・キングダム所有ウクレレの紹介ページにあったZOLELEレビュー。ZOLELEは鳴らないらしい。それもものすごく鳴らないらしい。マーチン・バックパッカーなみにショボイらしい(ってその時はマーチン・バックパッカーってのがどんなのか知らなかったのだけど)。ここで悩んだのである。

 私はこう見えても音楽が専門なのである。みっともないから言いたかないんだけど、本当なんだから仕方がない。その私が音を選ぶのではなくて楽器形状を選ぶというのはあってよいことなのだろうか。悩む、すごく悩む。

 件のウクレレ・キングダムでは、ウクレレの音を聞くこともできるのだった。聞いてみた。ZOLELE、確かにしょぼい。他の楽器と比べてみればそのしょぼさがよく分かる。

 さて、どうする? セカンド楽器を音で選ぶか形で選ぶか、音楽人としての根底に関わる岐路に立たされた私であった。


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公開日:2003.02.16
最終更新日:2003.02.17
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