GRAND ETTEILLAは、十八世紀フランスでカード占いを生業としていたEtteillaによって考案されました。一般的なタロットの体系に似ていますが、その構成はあまりに独創的です。
小アルカナ(数札)にあたるカードが十四枚ずつの四組、五十六枚。それに大アルカナにあたるカードが二十二枚あります。GRAND ETTEILLAが他のタロットと根本的に異なるのは、この全てのカードに一から七十八までの通し番号が振られていること、そしてその内容が旧約聖書的世界観に貫かれていることでしょう。
イブやアロン、黙示録の天使という他には見られないカードがあり、また一般的には単にLE JUGEMENT (THE JUDGEMENT)としか記されない審判が、LE JUGEMENT DERNIER (THE LAST JUDGEMENT)すなわち最後の審判となるなど、旧約聖書的要素が強調されています。
GRAND ETTEILLAはエジプト起源説と説明されますが、にもかかわらず旧約聖書的世界観に彩られるのは、ヘブライ神秘説「カバラ」に基づいて再構成されたからです。カバラとはユダヤ教のラビたちが、旧約聖書を神秘主義的解釈によって読み解くという方法論によって培われた、神秘哲学の一種です。
現在では、タロットの起源はエジプトにはないという説が主流になっていますが、それでもあえてエジプト起源が消えずに生き残っているのは、Etteillaと彼の同時代人Gebelinがともにタロットのエジプト起源説を唱えたことが遠因となっています。またタロットをカバラと結びつける試みも、後のArthur Edward Waite (1857-1942)をはじめ、現在に至るまで脈々と息づき、受け継がれています。
カードの考案者Etteilla (?-1791)に関しては出自こそ不明ですが、パリで理髪店を営んでいたAllietteという人物であることがわかっています。余技、副業である占いによって名を馳せ、占い稼業とともに占いの解説書の出版などでも成功したそうです。
「ETTEILLAを読む」はフランスGRIMAUD版を底本に、第一段階として付属リブレットを訳出していきます。その後、一般のタロット(主にウェイト版中心となることでしょう)との比較及びGRAND ETTEILLAのカードそのものに立ち返っての読解に進みます。
ETTEILLAの発音は、エッティラ、エッティーラ、エッチラ、エテイラなどと様々に表現されています。しかし、当サイト「開かない眼」ではフランス語の表記原則にならい、「エテラ」と読むこととします。GRAND ETTEILLAはリエゾンし、「グランデテラ」と読みます。Allietteは「アリートゥ」に近いものとなるでしょう(その際、トゥは伸ばさずにおきます)。
なおタロットはタローと発音されるのが本来で、タロットは日本で広まった誤読です。ですが、当サイト「開かない眼」ではあえて慣用的表現であるタロットで統一しました。
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