クリエイティブ・コモンズのライセンスを選択する

 ずいぶん前からどうしようかと思っていたのですが、というのはこのサイトの著作権のことです。2005年までにこととねをご覧になった方の中には覚えのあるという人もいらっしゃるのではないかと思いますが、これまでこととねの全ページ最下部には"(C) Copyright 1998, 2000-2005 KototoNe editorial department. All rights reserved."というようなコピーライト表示がなされていました。このコピーライト表示、実はなくてもなんら問題のないものなのですが、とりあえずこれをつけることで、このサイトのすべての著作権はこととね編集部にあるのだぞ、ということを駄目押ししていたわけです。

 さて、先ほどのなくてもなんら問題ないというのはいったいどういうことなのかといいますと、日本において著作権は、その作品が生み出されたときに自動的に発生するという仕組みになっていまして、これを無方式主義といいます。丸Cマーク(©)が必要となるのは万国著作権条約においての取り決めで、こちらは方式主義と呼ばれます。つまり、方式主義においては著作権に関するなんらかの主張がなされなければ、著作権が発生しないという考えなのです。今の主流はベルヌ条約で、このベルヌ条約というのは無方式主義を謳っていますから、この条約に加盟している国家間では、著作権は自動的に発生するのだと考えてもらってかまいません。

クリエイティブ・コモンズのライセンスとは

 この自動的に発生する著作権というのは、実に便利な仕組みで、もともとコピーライトというのは版権の意、複製する権利であったわけですが、つまり著作権者以外が勝手に複製しちゃいけないよという権利だったわけです。現在では複製の他に上演・演奏・放送・口述・展示・翻訳、上映なんてのがあって、さらに頒布権(は映画だけか)や公衆送信権、送信可能化権等々、とにかくたくさんあるからややこしい。あ、そういえばレコード輸入権ってのもあったな。と、とにかくたくさんあるわけです。

 こうした多種多様な事柄に対し権利が認められていて、著作権者に無断でそれをしちゃいけないというのは、そこに著作権者の暮らしが関わってくるからですね。例えば、インターネット上で著作権者に無断で音楽ファイルや映像ファイルがやり取りされることが問題視されて久しいですが、これなんかは著作権者の側からすればまさに死活問題であるわけです。なにしろ、本来そのレコードなりなんなりが売れることで入ってくるはずだったお金が入ってこなくなる。だから著作権は、上演や演奏、放送、公衆送信、送信可能化等々を著作者の権利として、彼らの生業を守ろうというわけです。

 でも、著作者にもいろいろな人がいます。例えばですね、ちょっと歌を作って録音してみた。みんな聴いておくれよ、という人もいるわけです。昔はこういう考えを持っていても頒布する手段が限られていましたから、ですが今は違いますよね。インターネットの力ですよ。自分のサイトで音楽ファイルを公開して、ただでいいから持っていってよ、みたいなことができる。インターネット上ではドラスティックな流通革命が起こっているわけです。

 で、無料で配るのまではいいとして、けどこれを例えば別のなにか、例えば自作の映画のBGMとかに使いたいとなると、これは著作権において保護されているので無理。でも、その曲の作者は自由に使ってくれてかまわないよだなんて思っている。

 こういうときにクリエイティブ・コモンズの考え方が生きてきます。

著作権の範囲を自分で決められる

 クリエイティブ・コモンズは、さまざまなライセンスを用意することで、著作者が自分の作品における著作権をどこまで主張するかを決められるようにしています。例えば、先ほどの音楽の例でいえば、派生禁止がはずれたライセンスを選べばいいということになりますね。

 クリエイティブ・コモンズのライセンスには六つの基本ライセンスがあって、日本法準拠版ライセンスは以下の通りです:

ライセンスを使う

 帰属というのは、原著作者のクレジットを表示してくださいということ。同一条件許諾は、この作品を自分の作品で使う場合は自分の選んだのと同じ条件を選択してくださいということ。派生禁止は、二次著作物を作らないでということ。非営利というのは、営利目的では使わないでということ。こうしたいろいろな禁止事項を付けたり外したりして、基本ライセンスはできています。

 クリエイティブ・コモンズに関してはさまざまな解説サイトもありますので、もしよければ以下のリンクも参考にしてみてください。

 クリエイティブ・コモンズの提唱者の一人である、ローレンス・レッシグ教授のBlogも興味深い記事でいっぱいです。

私の選んだライセンス

 私の選んだライセンスは、帰属 - 非営利 - 同一条件許諾です。こうしてあらためてみると、思ったよりも厳しいですね。帰属 - 非営利でもいいかなと思ったのですが、クリエイティブ・コモンズの考え方を広げたいとでも思ったか、同一条件許諾をつけてしまいました。

 実際問題として、こととねで公開されている文章や写真を使いたいという人がいるかというと、多分いないと思います。たいしたこと書いているわけでないし、それこそ日々の書き散らかしです。ですが、それでももしこれを使いたいんだというような人がいたらいけない。例えば印刷してなにかの資料に使いたい、それも引用を超える範囲で、というときには、これまでのAll rights reservedでは困るわけです。

 自分の書き散らかしを使う人がいるかどうかわからないのに、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを採択するというのもなんか大げさに感じられますが、ですが、それならAll rights reservedのほうがずっとずっと大げさです。どうせたいしたもんじゃないんだから、自由に使ってやってくれよ。そんな気持ちでクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの採択に踏み切ったのです。

余談1

 私がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを選択するさいに、最も重視したのは二次的著作物の作成を可能とすることでした。いや、こととねをモチーフとしたファン・フィクションやパロディを期待しているわけではありません。そうじゃなくて、これは私の希望といったほうがいいだろうと思います。

 つまり、私は自分ではそれをしませんが、ファン・フィクションをする人が身の回りにたくさんいるものですから、どうか彼女らにとって活動しやすい状況が発生してくれたらいいなと、そんな思いがあったのです。

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに見える二次的著作物を作成することができますという文言が、これからもっとたくさんの著作物に見ることができるようになれば、すごく嬉しいな。そんな風に思います。

余談2

 各ページ下部の著作権表示をクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのそれに変更するのがもう骨で骨で。なにしろこととねはむやみにページが多く、変更自体はDreamweaverの検索置換機能でやっつけることができた(正規表現の威力!)のですが、もし変な置換がなされていたら困るので、全ページを目視でチェック。ぶっ続けで六時間くらいかかり、死ぬかと思いました。それでCSSも書き換えて、それで年が改まるとともにアップロード。アップロードだけで一時間以上かかるってどうでしょう……。

 でも、この作業で、いくつかのページに発生していたエラーを洗うことができました。だから、たまにはこういう作業も悪くないのかも知れません。

余談3

 著作権についての記述を書き換えています。

余談4

 Cool Microsoft Corporation !


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公開日:2006.01.01
最終更新日:2006.01.01
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Creative Commons License
こととねは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 継承 2.1 日本)の下でライセンスされています。