昔し、イタリアに行ったことがあった。たった十日ほどの短い旅行だったが、僕にとってそれは非常に大きな体験だった。なかでも僕にとってプラスだったのは、言語に関してのことだった。僕にとっての第一外国語はフランス語である。イタリア語は第四外国語に過ぎない。だがその得意といえない言葉でもって、なんとか旅に足る分の意思疎通はなったのだ。伝えたいあるいは知りたいという情熱があれば言は通ずる、そして大抵のものは現地調達可能であると知った。場に臨み、そこに参加する意思さえあれば、人はいくらでも適応可能なのだ。半年も居れば、僕のイタリア語もなんとか日常レベルまで達したろう―― なぜこんなことをいうかというと、十日間のフランス旅行に出た人がいたからだ。故事に曰く、士別三日即更刮目相待(士、別れて三日なれば、即ち更に刮目して相い待つべし)。なので、僕はまさに刮目して四回目の授業に参じたのであった。
ともあれ実際はどうかというと、なにやらいろいろ大変だったようで、上達下達のうんぬんどころではなかったそうです。残念。
授業開始の前、先生の僕への質問攻勢がすごかった。前回の授業の終わって紹介した僕のサイトにつながらないということのようです。ノートパソコンを持ってきはったことに、一同声をあげて驚く。ネットワークカードがPCカードスロットにささっていて、無線でネットに接続できるのにはびっくりしました。しかも、Windowsがフランス語(fenêtresとはいわないんだろか)。WとZのキーが入れ替わっていることを、僕は見逃しませんでした。
先生が僕のサイトを見つけられなかった原因は、すぐ分かりました。というのは、サイトURIの、http://www.kototone.jp/fr/ を、最初のドメイン部分までしか入れていなかったためです。このサイトは@niftyの提供するスペースなので、snowdrop/ まで入れないといけませんと、言葉というか身振りというかで説明して、これで大丈夫かと思ったら、なんかまたいろいろと聞かれる。Copernicというソフトがあるようです。Web検索ソフトのようで、先生のおっしゃるには、"kyoto hotel" みたいにキーワードを入れると、それに関係するサイトがずらずらとリストアップされると。つまり、僕のサイトはどうすれば出るかと聞いたはるんやろうか? いや、うちのサイトの検索方法はわかりません。僕は、人がどうして僕のサイトを探し当てるかが分からないのです、とよく分からない返事をする。果たして、通じていたんだろうか? フランスにおける電算関連、ネット関連事情はそもそもからよくわからないうえに、関連語彙が辞書にものっていないことが多いので、こういうときは困ります。というか、困りました。
さて、授業がはじまるのはよいのですが、どうも僕は調子が出なくて弱りました。あんまり勉強しなかったですね、と先生からいわれて、いややはりそうなんだろう。フランス語のテキストも目は通したけど、ラジオも聴いたりしたけど、あまり身は入っていなかったかも知れない。映画も見たけど、フランス語を聞くというより、映画を見ることの方が重要だった気がする。なにより、夏目漱石ばっかり読んでたような気もする。そりゃ駄目です。頭の中が、明治の日本語に近しくなってしまってるんですから……
語学は一進一退、ざるで水を汲むが如し。この言葉を噛みしめる僕でありました。
今回のトピックは、場所を示す副詞。つまり、中性代名詞のyやenです。これ、場所を示すことが多いんですが、それにかぎらないんですよね。yはà + 名詞、enはde + 名詞に代わる代名詞で、つまりは分量を示したり、間接目的語を表したりします。しかしà + 名詞に代わるのはyだけではなく、lui, leurという人称代名詞もあって、使い分けが必要とややこしい。いや、ルールはさほど難しくないんですが、とっさに悩むんですよ。英語にはないこれら、便利なことは確かなんですけどね。
で、そのyやen。yはどこそこ「へ」、enはどこそこ「から」という意味になります。なので、行き帰りや昇り降りの動詞をペアで覚えれば、あとはy, enをつければいい、その覚え方はロバの鳴き声なのだという話でした。フランスでロバは、イーオン、イーオンと泣くらしいんですね(ちなみに英語ではヒーホー)。で、日本語ではどう鳴くかと聞かれたんですが、日本語でロバの鳴き声ってあったっけ? 困って、日本のロバは鳴きませんと答えたら、それがいやに面白かったらしく馬鹿うけでした。そんなに面白かったんだろうか? 僕は別に、大きくうけを狙ったわけではなかったんです。
日本における語学学習の一大形式として、講読というものがありました。つまり、その言語で書かれたものを読んで学習するというやり方。最近、比較的批判されることの多くなったやり方です。ですが、そんなに悪いものではないですよ。言葉というのは聞こえなければ駄目で、話せなければ駄目ではありますが、やはり同様に読めないわけにはいかないでしょう。素晴らしいものは、会話にも当然ありますが、文章にももちろんあります。なので、読むばかりなるは不毛ですが、読まないという選択もまた不毛。とにかく、インプットは多いことにこしたことはありません。
さて、読むとなればなにを読めばいいのでしょうか? 以前、僕は英語を頑張ろうと思ったときに、シェイクスピアのマクベスを購入、読もうとして挫折しました。って、そりゃ挫折しますって。難解であるというのも問題であるなら、言葉が古いというのも問題です。現在目にする英語とは、明らかに異なる単語があるんですから。ということからすると、現在目にしやすい言葉の使われている、つまり同時代性のある文章を読んだほうがよいということです。となれば、現代作家のものがいいということにでもなるのでしょう。
サン‐テグジュペリの『星の王子さま』なんかは結構人気があるようです。またカミュの作品なんかも、よく読まれている模様。とにかく、自分の好きなジャンル、傾向の作品を読んだほうが、きっと投げ出しにくいのでよいでしょう。ということで、僕はルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を読んでみたことがありました。英語じゃないですよ、フランス語版ですよ。
文章を読むとなれば、なにも文学的なものにかぎる意味も必要もありません。となれば、フランスに関する時事的なもの、つまりニュース、新聞を読むというのもなんだかよさそうです。
フランスの新聞で有名なものといえば Le monde ということになるのでしょうが、あれはちょっと難解な新聞なので、よほどフランス語に慣れていないときびしいかも知れません。それに、最初からフランスの事柄に取り組むというのも、レベルが高い。これらはいずれ達する目的ということにして、最初はまず日本の事柄をフランス語で書いたものから入るとよいということです。
例えば、NHKラジオ・フランス語講座のテキストには、時事フランス語が数編収録されています。日本に関するニュースがフランス語で書かれているので、辞書なしで読み始めてみても、自分の知ってる単語から全体像を類推していくことが可能。大きくざっくりと読んで理解することへの、よい練習になります。それと、日本人が書いたフランス語ということで、日本人にとってまずは受け取りやすくできているとのこと。慣れるにはうってつけかと思います。
意外と便利な表現も多くて、いい感じですよ。一週間に一編ずつ読めば、ちょうど一ヶ月で世見終わる手ごろな分量も悪くないですよ。
このサイトをオンラインで読んでいるということは、ネット接続環境があるということですよね。なら、フランスのサイトを見るのが、もっとも手軽にフランス語の文書に触れる手段ということではありませんか。さっそく、Yahoo! France にいってみましょう。
皆さんも、Yahoo! JAPAN を利用されたことがあるでしょう。インターネットの住所録として利用するほかに、ニュースを見たり明日の天気を調べたりと、いろいろな方面に役立ってくれるサイトです。これは、Yahoo! France においても同様。ニュース、スポーツ、天気予報その他に、取りあえず触れてみることが可能です。もちろん、音楽や映画といったエンターテイメントもありますし、興味のあるところにチャレンジするのが、なによりの早道でありましょう。
ある程度自信がついてくれば、Yahoo! をとびだして、様々なサイトに挑戦してみましょう。いやあ、これがもうなにがなんだか分からない表現があったりして、たまげますよ。でも、それも楽しみのひとつであったりします。以前CDを探してみたときは、K7 という表現に迷いました。Kはフランス語で「カー」、7は「セット」です。つまり「カセット」。ちょっとした判じ物みたいですが、こういう表現を見つけるのも面白いものですよ。
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