今週はゴールデンウィークで全国的に休日なので、フランス語学校もお休み。話すことはなにもありません――というのも、家から一歩も出ない引き籠り状態におちいってしまってるからなんですけど。けれど、こういう引き籠り状態ならではのフランス語の勉強法もあるはず。というわけで、今週は映画などを見てみることにしましょう。
歌に続き、映画を見るというのもまた一般に広くいわれている勉強法ではあります。ストーリーがあって、映像があって、仮に言葉の意味がわからなくてもその前後から意味を類推することのできる映画は、言葉の学習においてはきっと非常な力となってくれることでしょう。テレビでやっている語学番組や、学校の会話講座なんかでも、映画やドラマ、短いスケッチなんかをビデオで見ることも多いわけですよ。やはり視聴覚教材というのは、仏語話者との対面学習ができないような場合には、効果的であるということでしょう。
さて、映画を同じ見るのなら、劇場で観たいというのが人情です。ですが語学学習という観点からすると、反復視聴できるほうがいい、というわけでビデオなりなんなりで見るということになります。で、ここでお勧めしたいのがDVDです。というのは、DVDは頭出しが簡単! ――だからじゃなくて、字幕のON/OFFができるからです。
DVDの利点として、何度反復して見ても劣化がないということもありますが、それ以上に字幕のON/OFF可能ということが大きい。一度目は字幕なしで原語にチャレンジする。それである程度分かったつもりになってから字幕付きで見ると、自分の勝手な聞き取りと(ほぼ原語に準拠した)正しい意味の、大いに違うことにショックを受けることができます。あるいは、聞き取れない(聞き取りにくい)箇所を、何度も集中的に繰り返し見るなどもお手の物です。
映像があることの有利は、映像から意味をくみ取れるということだけではなく、表現に伴う身体表現――いわゆるジェスチャーやボディランゲージ――を一緒に知ることができるのも大きいです。こういったジェスチャー、表情なんかに関しては、やはり動いているものが頼りですから、こういう点で映画は非常に有効。なにしろ映画に出ているのは演技も達者な俳優たちなのですから、そのジェスチャー、表情なんかはきっとどんなテキストよりも、雄弁に多くを語ってくれることでしょう。
昔、知人に『風の谷のナウシカ』を好きで、その録画を何度も何度も繰り返し見たもんだから、結局台詞を全部(そのタイミングまで含めて)暗記してしまったいう剛の者がいます。つまりは、それほどに集中して、台詞の一言一句、ニュアンスまで含めて覚えてしまうとよい。となると、やはり好きなジャンル、好きな映画にこだわるのが上達のこつということになりましょうか。恋愛ものが好き、アクションが好き、フィルムノワール(犯罪もの)が好きというように、自分の好きなジャンルから選んでいくのがよいとなれば、きっと楽しんで長く続けられるのではないでしょうか。
僕の場合はといいますと、まさにフランス映画、といったようなものが嫌いでない性質なので、トリュフォー(『大人は判ってくれない』)とかゴダール(『勝手にしやがれ』,『気狂いピエロ』)とかルイ・マル(『死刑台のエレベーター』,『地下鉄のザジ』)とか、有名どころではリュック・ベッソン(『グラン・ブルー』……だけど英語なんですよね)なんかが良い感じです。
さて、そんな中でとりわけお勧めといえるのが、ピエール・コラルニック監督作品の『ANNA』。僕はこの監督についてはなにも知らないのですが、セルジュ・ゲンズブールが作詞作曲をしたミュージカル映画といえば、興味をそそられる方も多いのではないでしょうか。主演はアンナ・カリーナ。フランス国営放送がカラー化された際に制作された、テレビ映画なのだそうですが、今見ても旧さを感じないのはさすが! ですよ。
でも、お勧めの理由は映画の出来がよいからというのではなく、そのDVDの仕様によるものなのです。DVD版『ANNA』は、なぜか分かりませんが、フランス語字幕を選ぶことができるのです。しかも、フランス語字幕は日本語字幕がついてないところもきちんとサポートしています。おそらくはミュージカル映画であるためにフランス語字幕が付けられたのだと思いますが、どちらにせよ、これは嬉しい仕様であります。
願わくば、すべての外国映画が、原語字幕を装備してくれたら嬉しい。原語のニュアンスを知りたいときに、またこうやって聞き取りの勉強をしたいときなんかに、きっと力になってくれますから。けれど僕は未だ『ANNA』以外に、原語字幕付きの映画を知りません。どなたかほかにご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひお教えいただけると幸いです。
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