さて、ようやくレディーバードを弾いてみての感想だ。都合一週間ほど弾いてみて、感じことなど、少ししゃべってみたい。
レディーバードをはじめて弾いたとき、音が表板周辺だけに集まって遠くにとばなくて驚いたことはすでにいった。しかしその判断は性急だったようで、実際弾いてみると、そこそこ遠くまで音は達しているようなのである。
私は職場で昼休みにてんてけレディーバードをつま弾いているのだが、屋外で弾いているにも関わらず、結構遠くの表通りを歩く人が気付いて、こちらを見ながら通り過ぎていく。パートのおばさんからもいい音するねなんていってもらってちょっと喜んでいる。そう、私は若い娘にはもてないが、子供とおばさんにはうける、ってこんなことは関係ないな。
レディーバードを弾いてみて感じるのは、音が実に丸みを帯びていることだ。これはボディの小ささと弦の張力の弱さによるものだろう。あまり大きくない音で、鋭さもないから、穏やかな気持ちで向き合える楽器かも知れない。個人の楽しみでひとり弾くには最適じゃないだろうか。
音質は、表板の薄さがためか容積の小ささか、バンジョーが混じったような感がある。ちょっと間の抜けた――というとバンジョーに悪いが、郷愁あふれる音がする。スリーフィンガーでてんてけ弾むように弾けば、はるかな亜米利加を髣髴とさせるじゃないか。ミシシッピー川べり、金髪のジェニーが歩くわけさ。アメリカだね。
フラットピックがついてきたからといって、ピッキングワークに優れているかといえば、そんな感じはしなかった。フラットピックでの演奏に慣れれば変わってくるのだろうが、なにしろ自分はフラットピックをほとんど使ってこなかった。慣れないピックでかき鳴らせば、歯切れのわるいばらばらともつれた音がして、楽器の鳴りじゃなくて弦ばっかりがうるさい感じで嫌になった。
だから、この楽器はしっとり指で弾くのがいい。いや、どのギターを持ってもそんなことをいってるような気がするんだけども。
音量は、かなり小さい。伴奏を弾いて歌えば、圧倒的な声量がギター伴奏を覆い隠してしまう。なにしろ職場で弾いてるんだから、大声で歌ってるわけじゃない。なのに、自分の声でギターが聞こえないときがある。これはやはり音量に期待してはいけないのだ。
私は最近、指の先だけで、爪を使わず弾いているので、音量のなさはそのせいでもある。爪を使って弾けば、確かに音は大きく、艶も出てくる。けどちょっと簡単すぎる感じがして、うわべだけ鳴ってる感じがして、好きじゃないからやっぱり指で弾いている。
最初はほとんど鳴らなかったギターだが、一週間弾いているだけで、ギターが起きはじめたのか、指が慣れはじめたのか、だんだん鳴るようになってきた。指の力で音を出すのではなくて、タッチの工夫で音を膨らませる感覚だ。これを意識してレディーバードが鳴りはじめれば、自然ドレッドノートも鳴るようになってきた。やっぱりギターを換えると目のつけ所が変わって、それまで気付かないでいた弱点を補えるようになる。いい傾向といえるだろう。
弦をはじくときには、指先でしっかりとらえきれていないともちろん鳴らず、かといってしっかりつかみすぎると、荒々しくなって美しくない。だから、楽器の鳴る範囲を見極めて、その中で、オーバーするぎりぎりを狙うようなつもりで弾くのが一番いいんだろう。といっても、そんなことができれば苦労はないんだが。
今年いっぱいは、音質音色の探求と決めていたので、レディーバードはおおいに力になってくれそうに思う。ちょうどいい時期に、ちょうど適した楽器を手にできたというなら、自分は実に幸運だったなと思うのだ。なので、後は、頑張って弾くだけだ。