レディーバードの印象について語ってみよう。といっても、音については先送り。慌てると、間違った評価をしてしまうかも知れない。だから、ちょっとゆっくり付き合ってみて、楽器の癖というのが分かってからにしたい。
今回取り上げる印象というのは、楽器の作りについてだ。
ZOLELEをはじめて手にしたときには、思ったよりもしっかりしているという印象を持った。ではレディーバードの印象はどうだったかのか。実をいうと、思ったよりも華奢で弱そうな感じがしたのだった。この違いはいったいどういうことなのだろう。
レディーバードの表板はスプルース単板で、値段の割にはいい仕事してるという気分がしてちょっと嬉しいのだが、この板が実に薄く繊細に作られている。そりゃあのサイズで、分厚い板を張った日には台なしだろう。だから薄い板でできているのはかまわない、というか、むしろありがたいといったほうが正しい。
さてレディーバードのサウンドホールから手を入れてみると、ブレースがそれほど入っていないことが分かる。マーチンなんかだとバッテンの形に入っている。クラシックギターでも扇型にしっかり入っているが、レディーバードは短いブレースが水平方向に数本、ボディ下部には縦方向に向かって数本。それもそんなにがっちりした感じのものではなかった。
こういう要素が、華奢な感じをより以上に強めているのだろう。目に見えないブレースを感じ取ったわけでもないのだけどさ。
表板の薄さやブレースの数は、弦長が短くテンションの低いこの楽器で、響きを得るためのバランスをとった結果なんだろう。ドレッドノートは、レディーバードと違い、非常に頑丈な感じがするのだが、あれは弦の張力も高いしボディの容積も大きく、まったく違うコンセプトの楽器だ。
ドレッドノートが大木なら、レディーバードは風にそよぐ草花といったような雰囲気がする。
対して、ネックはレディーバードのほうが太い。
これは、ネックにトラスロッドが入っていないためだろう。楽器屋の兄さんもそういっていた。
レディーバードの太めのネックを握ると、ちょっとレスポールに似た雰囲気を感じる。いや、最近エレキギターは触ってないからよく分からないんだが、しっかりと手の中に収まっている感じがするのは、自分のレスポールもそう、レディーバードもそうだ。
ドレッドノートは、対してネックが非常に細い。一番ネックにかかる力が大きいはずなのだが、それでも細い。ネックを握っても、手の中にネックがあるという感じがしない。すっきりと存在感を感じさせないような細さがあって、そのせいで、反面クラシカルグリップ(ネック裏に親指を立てる、クラシックでやるような握り方)では、ネックが細い分親指に負担がかかってしんどい。一長一短に思う。
握り込んでコードを弾くようなときには、細いネックがいいんだろう。けど、クラシカルなフォームでやりたいときには、ちょっと太めのネックがあっているようだ。
けどさレディーバードとかレスポールで、ネックを握らないってこともまたないように思う。少なくとも、自分は握って弾くと思うよ。
レディーバードは、非常にボディーが小さい。バロックとかルネサンスとかのギターを髣髴させる小ささで、その上結構薄い。だからボディが軽い。しかも持ちにくいと来ている。
前にもちょっと書いたが、レディーバードを弾くにはストラップが必須だ(だからか、紐がついてきている)。紐の長さを目一杯生かすと楽器が下がりすぎて弾きにくくなるので、ちょっと短めに結わえなおして弾くと、結構悪くない。座奏の時もひざに楽器を置く感じではなくて、立ってるときと同じような感じで弾くといい。いや、多分立って弾いたほうが弾きやすい楽器なんじゃないだろうか。ZO-3もそうらしいが、これはコンパクトな楽器の宿命みたいなもんなんだろうか。
ボディが非常に軽いため、ネックが下がりぎみになる嫌いがある。私はネックを立てて弾くほうなので、慣れずちょっと弾きにくい。けど、普通のスチール弦のギターでも、ひざに横に乗せて弾く時はネックがほぼ水平になるのだから、そういったフォームに慣れるのにもいいかも知れんと、いいようにとらえておいたほうがよさそうだ。
もし足台を使って弾こうとしても、かなり足代を高くして、両足で挟み込むようにして弾かないと無理だろう。そうすると、ビオラ・ダ・ガンバみたいな構えになる。ガンバは弓で弾くからあれでいいんだろうが、つま弾くギターでまっすぐにたたれると非常にやりづらいから、やっぱりレディーバードは紐で下げて弾くほうが似合っているのだ。