ペグが一本折れてしまったので新しく買ってきたのだが、ここにひとつ思い違いがあった。ゴトーのSG-301くらいしか選択肢はない
というのがそれで、実はそれ以外にも選択肢があったのだ、それも最も適切なのが。それはなにかというと、グローバーの102Cである。
折れたペグをもって楽器屋に行ったら、これはモーリスですかと聞かれて、いやアリアなんです。ちょっと待ってねと詳しい人が呼ばれた。その人はペグを一瞥して、棚からペグのセットを取り出して、これが同じ型のですとのこと。グローバーの102Cである。現金特価6,000円だった。
正直、高いと思ったね。というのも、ゴトーのSG-301、定価5,100円のものを買うつもりで来ていたのだから、定価7,000はさすがに高いと思った。ゴトーのとかはありませんかといったら、ちょっと置いてない模様。しかしこの折れたペグのオリジナルは、このグローバー製なんですよ。確かにみれば、ボタン(つまみ)の形が同じだ。ゴトーのはちょっと角張りがあって、確かにアリアのペグはグローバーのコピーなんだと納得した。
正直自分はオリジナルだとかなんかとかには興味がないので、それがグローバーでなくっても構わなかったのだが、ねじ穴の位置を考えるとこれ以外に選択肢はなかった。モーリスのペグは三千円前後と安かったが、ねじ穴の位置が違ったのだ。だからグローバーのを買ってきた。6個セットで、ずしりと手に重いね。
ふたつのペグの違いといえば、なにより重さが違う。グローバーの方がずしりと重い。作りもちょっと大振りで、そのかわりしっかりできている印象がある。多分ペグとしての精度もこちらのほうが上だろう。
アリアのペグは、ヘッドに接する面に、回転を止めるためだろう、小さな突起が3つつけられていた。対してグローバーのにはそれがなく、ねじ止めは必須である。木ねじの径違いがあると厄介だが、幸いその点は問題がなく、折角だから新しく買ったペグについてきた木ねじで止めた。
材質をみると、アリアのペグは洋白というか、随分柔らかいものと感じられる。代わりに軽いのだろう。グローバーは金属の質からして剛性が感じられる。長期にわたって使うことを考えると、しっかりしているほうが望ましい。この点については満足である。
楽器屋で、ペグの交換は音質に影響するかと聞いたら、同じロトマチックなので目立った違いはないと思いますよとのことだった。実際、自分もそんなに変わろうとは思っていなかった。しかし、ちょっとどころではない。音質はしっかり変わったのである。
ペグの質があんまり違っていたので一度に全部取り換えたのだが、適当にチューニングを合わせておこうと軽く鳴らしてみたら、音が太くなっていた。おかげで、最初なんかは高めにあわせようとしてしまったくらいだ(私はチューナーの電子音で音を取るのが苦手だ)。
音質は随分変わった。目立ったところをあげると、
というところだ。特に、開放弦で弾くと暴れぎみだった第3, 4弦あたりが、おとなしくまとまるようになったのは大きいだろう。
ペグの剛性が上がり、ネックへの伝達性が上がったためだろうと推測した。特に音のタイトになったのは、そのせいだと思った。ヘッドにしっかり固定したのもよかったのかも知れない。
音の変化はおおむね良い感じだったが、反面低音のふくよかさは失われてしまった。第5, 6弦の響きは少し抑制気味だ。このあたりは少し面白くないところである。
ペグを換えることで得られる音質の変化についてざっと調べると、自分の感じた変化はおおむね一般的に起こるものであることが分かった。
ペグによる変化の理由は、その重さによりところが大きいらしい。ペグの重さが軽いと倍音を多く含む音になり、重さがあるとまとまりのある硬質な音になるそうだ。
これを踏まえると、剛性やなにかよりも、ペグの重量が変わったことが音質に影響したことが分かる。手で比べて分かるくらい差があったのだから当然といえば当然。しかし、同機構のペグであれだけ変わるのなら、オープンタイプのペグなど、もっともっと軽いものを試してみるとさぞや違いがあからさまになることだろう。
ペグの違いで現れる音の変化。面倒くさがりやの自分にしても面白いと思ってしまったのだから、楽器のパーツに凝る人がいるのも当然だと思った。ただ自分はまだ、面倒くささの方が勝ってるので、凝る余地はないのだが。
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