アストリアス研究における第一人者、shimio3さんが上洛されるというので、お会いする運びになったのだった。氏の興味にはやっぱり私の楽器もあったようで、できれば持ってきてくださらんかとの由。ううむ。あの重いケースを持ち出さんといかんのかあ、面倒だなあ。それに楽器自体あんまり持ち出したくないだよなあ、と一度は渋って、けどこれもいい機会だから弾いてもらおうと思った。ところが今日は雨。しかもえらい降り。雨や雪なら持ってかないつもりだったので、正直ちょっと気落ちして、運が悪いんだな。なんか私があの楽器を持ちだそうとすると必ずといっていいくらい降ってる。去年演奏会に出たことがあったが、実はその当日が雨で、その練習でも雨。いや、もちろん晴れた日もあったけれど、なんでか雨が多かったのだ。
天気予報を見れば夕方から曇りとあったので、運がよければ持ち出せる。弦を張り替えて、用意万端で、そうしたら、夕刻には晴れ間がのぞいた。いや、すごいよ。こりゃ日頃の行いだね。いや、私のじゃなくて、shimio3さんの行い。
きんこう楽器がアストリアスをたくさん置いているので、その試奏もできればどうかという話になったので、きんこう楽器で私の楽器も弾こうということに決まった。きんこう楽器は、私は京都に住んでいるというのにいったことがなくて、で、いってみたら確かにアストリアスがいっぱい。試奏ブースがちゃんと用意してあって、そこにはカタログにはないモデルがいろいろそろっていて、ちょっとびっくりした。というのも、今までこんなにアストリアスがそろっている楽器店を見たことがなかったからなのだが、スチール弦もあればナイロン弦(クラシックギター)もあって、いや、本当にすごい。アストリアスファンなら一見の価値はあります。
shimio3さんが興味を持っていたのはOMタイプのギター。小振りのボディにネックはドレッドノートと同スケールだから弦の張りが強いわけだ。アストリアスではECという、えーと、マーチンでいうOOOのモデルがあるんだが、これはボディが小さめ、スケールも短め、指弾きに向いている。けれど、ダウンチューニングをするとちょっと弦の張りが弱くなるので、音からも張りが失われる傾向にあると。最近氏は、押尾コータローの曲に興味を持っていらっしゃるようで、押尾コータローはDADGAD等の変則チューニングを多用するから、スケールの長いギターの方が向いている(押尾コータローのメインギターはグレーベンのDだ)。で、shimio3さんはこれをOMでやればどうなのかというのを考えていらっしゃったらしい。
で、弾いてみて、実によい感触だったようで、アストリアスらしい音のまとまりにOMらしい反応のよさがよいということなのだろうか。
で、私も弾いてみたんだ。実は私はドレッドノート以外のフラットトップギターを弾いたことがなくて、だからこれがはじめての経験。ネックを握ってみて、その細さに驚愕、って私が楽器を注文するときに、指板幅を45mmで発注したのが悪いんだけどさ。
で、他に驚いたのは楽器の軽さ。すごく軽い。そのせいか、音もすごく軽く出る。軽い音が出るというわけじゃないんだ。けど、すぽんと出る。ドレッドノートはぶうんと出る。低音なんかはすごくタイトな感じで鳴っていて、普段ドレッドノートを弾いているものだからちょっと物足りなく感じた。でも、人が弾いているのを聴くと、バランスがいいんだ。そうか、フィンガーピッキング向けというのはこういうことなのかと思った。
私のドレッドノートを弾いてもらって、実はこれまで私は自分の楽器がどんな風に鳴るのか、客観的に聴いたことがないので、またこれもはじめての経験だ。そうしたら、鳴りはふくよかで広がりがある。でも、アストリアスらしくまとまりはあるという話だ。私はアストリアス以外の楽器はアリアしか知らないから、こういう比較みたいのができないんだね。でも、今日の試奏で少し楽器の特性というのが理解できたように思う。
気分をよくして、オールマホガニーのドレッドノートも弾かせてもらった。そうしたら、やっぱり音が全然違う。ちょこちょこ弾いてみて、正直、スリーフィンガーをやったりするなら、こっちの方が向いてると思った。音の立ち上がりが軽く、そんなに倍音が含まれていないから、わんわんとうるさくならない。面白いギターだなあと思って、正直欲しくなった。
こうしていろんな楽器を弾くというのは発見がある。材がほぼ同じでボディの違うギターと、ボディが同じで材が全然違うギターを弾いて、自分の弾いているギターの個性がよくわかった。そうか、こういう楽器を弾いていたのかとわかった。いろいろな楽器を弾くということは、今弾いている楽器を知ることにも繋がるのだなと思ったのだった。で、いろんな個性の楽器に興味も持って、しかし私には自分の今使っている楽器がいいと思う。やっぱり最初に楽器を買ったときの判断:軽くて明るくて派手なものよりも、落ち着いて響きの太いほうが好きです
という好みにあった楽器だと思うからだ。あまり意識はしていなかったが、なるようになってきたんだなと、そんなことを考えてしまった。